指導は少人数、運動用マスク着用 沖縄の空手道場「子らに前向きな気持ちを」【#コロナとどう暮らす】


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運動用マスクを着用するなど感染症対策を実施し、門下生に形の指導をする伊藝武さん(奥)=18日、金武町の少林流正道館空手道協会金武道場

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、沖縄県独自の緊急事態宣言は15日から29日まで延長となり、県内では多くの空手イベントが中止や延期に追い込まれ、空手道場が稽古を自粛するなどの影響を受けた。指導者たちは空手離れや鍛錬不足を防ごうと、さまざまな工夫を凝らしている。金武町の少林流正道館空手道協会金武道場は1日から道場を一時閉めた後、モチベーション向上を図ろうと17日から4日間、1~2人の門下生を迎えて短時間で指導する。

 「こんにちは。元気そうだね」。師範の伊藝武さん(59)と娘のあいかさん(金武中3年)が道場に訪れた親子に笑顔であいさつした。

 その後検温と手指のアルコール消毒を行う。汗をかいても息がしやすい運動用マスクを配布し、10分間の稽古が始まった。

 社会的距離を保ち、形、組手に分けて指導を変える。組手の選手には突きの角度や、引き手への意識など動きの細部まで指摘する。形の選手には演武を見て、「いなす時はこう。本当に戦っているんだと審判に思わせないと」とイメージを伝える。子どもたちは師範の一挙手一投足をじっくりと観察していた。

 伊藝さんは32歳で大阪の糸東流の道場に入門した。49歳で沖縄に戻ってからは、明日香さんとあいかさん2人の娘と、うるま市の少林流正道館空手道協会川崎道場で鍛錬を続けた。だが道場まで車で40分の距離は遠く「娘たちのためにも、もっと空手の時間を確保したい」と世話になった崎山博先生からの独立を決めた。54歳の決断だった。

 道場を立ち上げた当初、門下生8人と自宅の車庫で稽古をした。2人の娘と他選手もめきめきと実力を伸ばし、県大会でも上位の常連となる選手に成長し、「涙が出るほどの感動を味わった」。

 感染拡大の流行第1波が訪れた3月以降、練習は自粛となり数々の大会が中止になった。門下生5人が「関心がなくなった」と目標を見失い、道場を離れた。子どもの成長の喜びを知る伊藝さんは「本当にショックだった」と語った。

 それでも伊藝さんは前を向く。同じ轍(てつ)を踏まないように、今回の稽古を実施した。

 息子が道場に通う宇江城かよさんは「家では限界があるので、ありがたい」と感謝する。

 伊藝さんは「子どもたちには何事にも自信を持って、前向きな気持ちで向き合ってほしい」と力を込めて話した。
 (喜屋武研伍)