「国策が弱者を引き裂く」ハンセン病元患者遺族、辺野古問題と差別重ねる 愛楽園オンライン企画


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ハンセン病患者への差別について話した50代男性=22日、名護市の沖縄愛楽園交流会館

 【名護】「家族の絆が引き裂かれた」―。父親がハンセン病元患者だった50代男性=大宜味村=は22日、沖縄愛楽園交流会館(名護市済井出)で開催されたオンライン企画「家族の語り」に登壇し、国策による患者らへの差別について語った。男性は、辺野古新基地建設にも抗議活動を続けている。ハンセン病隔離政策や差別が家族関係を破壊したと指摘し、基地建設にも重ね「国策に翻弄(ほんろう)される弱者を虐げる構図は同じだ」と訴えた。

 男性は県外のハンセン病療養所で生まれた。6歳のとき、一家は那覇市に移住した。父は酒を飲み、家族に手を上げていた。「こんな大人にはなりたくない」と父に心を閉ざし、憎んだ。

 大人になってから土木業で生計を立て、父とは疎遠なままだった。変化が生じたのは2015年、沖縄愛楽園でハンセン病元患者の証言集を読んでからだ。証言集で父の半生を知り、衝撃を受けた。父は会社などで元患者として差別を受け、周囲に相談もできず酒に逃れていった。「父の苦しみも知らない中で、自分は恨むばかりだった」

 むせび泣きながら証言集を読み、ハンセン病隔離政策に伴う差別が男性の親子関係を破壊したと気付いた。それを知った翌16年、父は死去した。父と関係修復ができなかったことを悔やむ。「親子の溝を埋めるには何年もの時間が必要だった。親子の絆を引き裂いた国策は許せない」

 土木関係で働く中、米軍基地で工事も請け負い、基地問題にも関心を持つようになった。1997年、普天間飛行場の辺野古移設の是非を問う名護市民投票では「条件付き賛成」を呼び掛ける運動に動員された。投票結果は「移設反対」が過半数で、男性は仲間の土木関係者と喜んだ。「嫌々ながら賛成を呼び掛けていた。土木屋だって本音は反対だ」と当時を振り返った。

 現在、男性は各地で基地問題やハンセン病に関する差別問題について講演を続けている。「二つの国策が翻弄し、弱者を虐げる。気付いてもらうことで運動が広がる」と強調した。
 (塚崎昇平)