緊急事態延長で「干上がる」 観光地や飲食店悲鳴、行政に存続策を切望


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 新型コロナウイルスの感染者が県内で急増していることを受け、観光シーズンを迎えた8月1日に、不要不急の外出自粛などを求める県独自の緊急事態宣言が発出された。玉城デニー知事は旧盆が明ける9月5日まで1週間延長することを決め、緊急事態宣言は1カ月を超えることになった。県内の観光地や繁華街の事業者からは「早く解除してくれないと干上がってしまう」と悲鳴が上がる。

緊急事態宣言により休館が続く沖縄美ら海水族館=28日、本部町

 例年なら多くの観光客であふれる県内の人気観光地は長期間にわたって休業し、観光客の需要を見込んでいた周辺の事業者にも大きな影響が生じている。

臨時休業

 北部観光の中核である沖縄美ら海水族館(本部町)は、8月2日以降休館している。緊急事態宣言の延長を受けて、9月5日まで休館を続ける。美ら海水族館に向かう県道沿いには、観光客向けの飲食店や土産品店が並ぶものの、ほとんどの店に「臨時休業」の張り紙が貼られている。

 本部町で革製品を製造・販売する革人(かわんちゅ)は、4月から約2カ月間休業した。7月に営業を再開した途端に県内で再び感染が拡大し、経営は窮地に追い込まれている。7人ほどいたスタッフも、自主退職や解雇で現在は1人になってしまった。

 池田崇代表は「苦渋の選択だった。余力があるうちに解雇を決断しなければ、店が沈んでしまう」と苦しい胸の内を語る。もらえる給付金は全て申請し、金融機関からの借り入れで経営をつなぐが、雇用の維持は厳しかった。

 「店がつぶれると、コロナが収束した時に新たな雇用を生む場が町からなくなる。行政には経営者を守り、雇用の場を持続する制度を充実させてほしい」と訴えた。

戻らない客足

 緊急事態宣言は続いているものの、繁華街の遊興施設に対する休業要請や、飲食店の時短営業要請などは既に全面解除となっている。しかし、県民に対して午後10時以降の外出を自粛するよう求めていることなどから客足に大きな変化はなく、酒を提供する店などからは早期の解除を求める声が上がっている。

 県内の酒類卸売業者によると、量販店向けの出荷は「家飲み」需要もあり前年と同水準をキープしているというが、飲食店や繁華街でよく飲まれていた泡盛など度数の強い酒類の売れ行きは振るわないという。担当者は「自宅で1人飲みする時にはビールなど度数の低い酒にシフトしている。販売利益は落ちているので、長期化するとより厳しくなる」と話す。

 那覇市内のバーは、県からの時短営業要請が解除された16日以降も客足は鈍いままだという。経営者の男性は「特に会社の飲み会などが禁止されているせいで、2軒目の客がほとんど来ない」とうなだれる。28日に緊急事態宣言の延長が発表されると、「解除を期待していたが、きつい」と落胆を隠さなかった。

(石井恵理菜、沖田有吾)