<識者談話>「一律仕様書」が沖縄企業の参入障壁に 「ザル経済」つくる一因 宮田裕氏


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宮田裕(地域開発論)

 沖縄振興の原点は、故・山中貞則氏(元衆院議員、初代沖縄開発庁長官)が沖縄振興法制を立法化するときに持ち出した「償いの心」だ。沖縄戦で県土が破壊され、異民族支配が27年間も続いた。だから国は沖縄に責任を持つ。ここがスタートラインだったが、近年は「基地とのリンク論」が台頭し原点が崩れている。

 国直轄事業も、ほとんど資本の論理に基づいて本土企業への優先発注型になっている。ほとんど沖縄版の政府開発援助(ODA)の様相だ。沖縄を舞台にして振興予算が本土資本につまみ食いされていく。沖縄のザル経済をつくる一因だ。

 なぜ沖縄企業が公共工事を受注できないのかについて過去の沖縄総合事務局長は琉球新報のインタビューに対し「企業の技術力」「コスト競争力」を課題に挙げた。だが最近の沖縄企業は高層ホテルの工事もかなり実施しており、技術力は本土並みだ。

 本来、沖縄振興は沖縄の実態に合わせて仕様書を作成するべきだが、全国一律の仕様書になっていて沖縄業者が参入しにくい面もある。沖振法という特別立法に基づいた公共事業なので、沖縄版の仕様書があってもいい。また、本土資本が公共事業を受注する場合は、本社を沖縄に置くことを条件にして税金を還元させる仕組みを作るべきだ。

 沖縄が日本に復帰した1972年度から2021年度末の50年間で沖縄の主要プロジェクトは基本的に完了する。新型コロナウイルスの問題などで国の財政事情が悪化している。特別に沖縄への振興予算を確保することは難しくなる環境変化だ。これから沖縄で一番ネックとなるのは財政問題だ。県は検証を進めてほしい。
(宮田裕 沖大・沖国大特別研究員=地域開発論)