18歳から災害救助携わるスペシャリスト 台湾出身・黄春源さん 沖縄に移住、ノウハウ伝授


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災害現場で救助活動を仕切る黄春源さん(中央)=台湾新北市、2015年(本人提供)

 9月1日は「防災の日」。インドネシアのロンボク島地震や九州豪雨など、これまで国内外で発生した大規模な災害現場で救助に当たってきたスペシャリストが沖縄県内にいる。18歳から災害救助に携わる台湾出身の黄春源(ふぁんしゅんゆえん)さん(46)は、約26年間、日本と台湾双方の災害救助訓練の交流に尽力してきた。

 黄さんは災害時に国境を超えて相互協力する国際機関「アジアパシフィックアライアンス(A―PAD)」の緊急捜索救助チームのチーフを務める。A―PAD所属の飛行機が東南アジアへ救助に向かう際の中継点となる沖縄で、給油や物資補給を手配するため、2018年に妻と広島県から移り住んだ。

 現在は県内の消防関係団体に自身の救助経験について講習するなど、沖縄の救助技術向上に貢献するとともに、沖縄を拠点にスリランカの災害救助訓練にも注力している。

日本と台湾の懸け橋として災害救助訓練の交流などに貢献してきたアジアパシフィックアライアンス緊急捜索救助チームの黄春源チーフ=浦添市内

 黄さんによると、スリランカでは毎年洪水などで平均600人が犠牲になっている。同国の水難救助の技術を高めるため、これまで軍関係者や警察、消防士などに訓練を実施してきた。黄さんは「スリランカの救助技術は20年前の台湾と同じレベルだ。彼らの技術向上を手伝うことは非常にやりがいがある」と使命感に燃える。

 訓練だけでなく、これまで培ってきた人脈を活用しスリランカへ救助用ボートを贈るための募金活動も展開した。

 黄さんはアジアで数人しか所持していないという世界最大のダイビング教育機関「パディ(PADI)」が認定する公衆安全ダイバー(public safety diver)の資格も持ち、沖縄の海域で外国人の水難事故が発生した際にも協力している。黄さんは「沖縄は観光立県を掲げるが、大規模イベントを開催する際の危機管理がまだ不十分だ」と指摘し「外国人観光客に対する災害時の言語対応や、消防など行政間の連携も強化する必要がある」と提言した。
 (呉俐君)