国直轄振興策で懐柔【安倍1強政治と沖縄③】


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 安倍政権は、時の沖縄県政が米軍基地問題で政府に貢献するか否かで振興予算を増減する「アメとムチ」政策を展開してきた。辺野古新基地建設推進に向けた最大のヤマ場だった県の「埋め立て承認」を仲井真弘多元知事から得られると、振興予算を大幅に増額した。

 しかし新基地建設に反対する故翁長雄志前知事と玉城デニー知事の県政には減額傾向が続く。基地建設に反対する知事や市長の影響力をそごうと、市町村や地域に直接補助金を交付する制度も創設した。

 安倍政権は2013年12月、普天間飛行場の「県外移設」を公約していた仲井真氏の態度を変更させようと、14年度当初予算を13年度当初から500億円増額する異例の厚遇で態度の転換を迫った。

 「第5次沖縄振興計画(12~21年度)実施期間の沖縄振興予算を毎年3千億円台確保する」ことも約束し閣議決定した。仲井真氏は13年12月末に埋め立て承認を表明し、新基地建設が動き始めた。

 新基地建設に反対する翁長氏が知事に就任した15年度以降の振興予算は減額傾向にある。3千億円台は確保されているものの、全国の都道府県予算には組み込まれない那覇空港第2滑走路増設や沖縄科学技術大学院大学(OIST)の整備費用も含まれており、これらも含むと3千億円台は割り込む。県の裁量が大きい一括交付金は6年連続で減額している。

 防衛省は16年度、新基地が建設される辺野古を抱える名護市の稲嶺進前市長が反対姿勢を示し、米軍再編に理解を示す自治体に支払われる再編交付金を受け取らなかったことから、「再編関連特別地域支援事業」を創設した。

 同事業で辺野古と豊原、久志(久辺3区)に直接補助金を給付した。移設を事実上容認する渡具知武豊市長が18年に当選して再編交付金を受け取ると同事業を廃止した。

 19年度には政府は県を通さず市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費」を創設した。翁長県政を引き継ぎ基地問題で対立する玉城県政が県内市町村に及ぼす影響力をそぐ思惑が透ける。さらに予算全体に占める国の直轄事業の割合は年々増えている。

 沖縄基地負担軽減担当相の菅義偉官房長官は16年8月、沖縄の基地問題と沖縄振興について「両方の課題を全体で総合的に推進していく意味合いにおいてはリンクしているのではないか」と発言した。沖縄振興特別措置法の立法趣旨とかけ離れた「基地とのリンク論」を露骨に持ち出した。

 沖縄大・沖縄国際大特別研究員の宮田裕氏は「沖縄振興特別措置法では基地があるから振興するとは定義していない。沖縄の歴史などの特殊事情に基づいて沖縄振興に国が責任を持つと立法趣旨に書いている」と指摘する。その上で「安倍政権は日米安保体制を重視する。沖縄振興は辺野古問題を巻き込んだ形になってしまった」と語った。 (梅田正覚)

沖縄の基地負担軽減策などをめぐり会談する安倍晋三首相(手前左)と会談する仲井真弘多知事。仲井真知事は2日後、辺野古沖の埋め立て承認を表明した=2013年12月25日、首相官邸