観光・飲食業「稼ぎ時」逃し先見えず 緊急事態解除


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 玉城デニー知事は4日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を5日で解除すると発表した。経済関係者は、1カ月以上続いた緊急事態の終了を歓迎した一方で、例年なら「稼ぎ時」となる観光シーズンの売り上げが不振を極めた観光や飲食業界からは、経営の先行きを不安視する声が相次いでいる。

 ビーチリゾートが主力の沖縄観光は7~8月に人気が集中し、ホテル単価も上昇する。しかし緊急事態宣言が発出されたことでブレーキが掛かった。日本旅行業協会沖縄支部の與座嘉博支部長は「この1カ月、『旅に出てはいけない』という(社会の)雰囲気に飲み込まれた」と語り、宣言が終了しても自粛の雰囲気は残ると見通す。「事業者の感染対策が伝わっていない部分がある。安全対策の見せ方を考える必要がある」と話し、安全な観光地のアピールに力を注ぐことを強調した。

 沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は、解除後の受け入れ態勢について「団体客も増えていくだろう。空港内に設置された発熱者検査室を増設する必要がある」とした。

 解除により、イベントの開催も増えることが見込まれる。10月24、25日に沖縄の産業まつりがオンラインと実店舗で開催される。県工業連合会の古波津昇会長は「感染状況次第では実店舗での開催は難しくなる。解除後も気を引き締める必要がある」とした。繁華街や飲食店にも大きな影響が生じている。バーやスナックなど約2500店舗が加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長は、那覇市松山地域でのクラスター(感染者集団)発生もあり、「宣言中は、人の目を気にして早めに営業を終えざるを得ない店が多かった。ようやく元のようにに営業できる」と話す。一方で「観光客や企業をターゲットにしていた店はまだ苦しい。運転資金に充てるため自分の保険を解約した人もいる」として、先行きには不安をのぞかせた。

 県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長によると、県内で8月の飲食店の売り上げは前年の5割減だった。県が午後10時以降の外出を控えるよう県民に呼び掛けたことで、企業の会合や接待などが減り、客足が遠のいたという。「運転資金が底を突いて廃業する店が増えるのではないか」と懸念した。