「看板屋は器用」パーティション売り上げ増 糸満の業者、コロナ危機をチャンスに


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新型コロナウイルス対策用のパーティションを製作したタムの伊藝博社長=4日、糸満市西崎町

 新型コロナウイルス感染防止のためにあらゆる場所に設置されるようになったのが飛沫(ひまつ)飛散防止のパーティションやビニールシートだ。県内での感染拡大が始まった4月上旬からパーティションを製作し、売り上げを伸ばしているのが広告看板デザインなどを手掛けるタム(糸満市)。伊藝博社長は「看板屋は手が器用。持っている機械や材料、技術を生かし、世の中が必要とするものを素早く出していく」と語る。

 きっかけは取引先からの「飛沫飛散防止のパーティションを作ってほしい」という要望だった。屋内外の看板、内装、イベントで使用する道具などを製作する同社は鉄、木材、アクリルなどさまざまな素材を扱っている。さらにそれを好きな形にデザインし、作る人材もいる。

 「新たな設備投資をしなくても自分たちが持っている技術、機械で作れる」とすぐにアクリル板を発注し、商品化。動画を作成しSNSで発信するとホテル、役所、企業、学校などから次々に依頼が入った。

 飛散感染予防パーティション「ウイルスガード」と名付けられた商品は客の要望に応じて作る完全オーダーメードだ。県外の高校の要望を受けて作った学校用は、授業中は生徒たちの机に置き、終われば折り畳んで片付けられるように、軽量の塩化ビニール製にした。

 同じ規格のものを大量生産しないため、在庫を抱える必要がない。すべて内製のため利益率も高い。中小企業だからこそできるビジネスモデルでもある。

 これまでに2860台の発注があり、約1500万円を売り上げた。

 タムはイベントで使うパネルも製作しているが、イベントが中止になっているため、そこの売り上げは大幅に減少している。伊藝社長は「パーティションがなかったら、会社全体の売り上げは確実に前年割れしている」と話す。

 会社としてもう一つ大きかったのは、社員たちから商品のアイデアが次々と出るようになったことだ。

 「自分たちの技術で世の中に必要とされているものを作り出せるという成功体験になった。コロナの影響はまだ続く。その中で何ができるのか考えられるようになった」。ピンチをチャンスに変えコロナ禍を生き抜いていく。
  (玉城江梨子)