困窮世帯の食卓は① 毎日120食、配布依頼急増 「子ども広場in那覇」<新型コロナ 暮らしの現場>


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子どもたちは、食事をしたり音楽を聴いたりと思い思いの遊びをしている=8月、那覇市の子ども広場in那覇

 長引く新型コロナウイルスの影響による景気の落ち込みが、困窮家庭をさらに厳しい経済状況に追い込んでいる。増え続けていた沖縄県の雇用は減少に転じ、立場の弱い非正規労働者を中心に雇い止めや勤務時間の短縮を強いられている。「冷蔵庫に何もない。何か持ってきてほしい」「助けてほしい」。県内のフードバンクや夕食宅配、子ども食堂などを運営する支援団体には、支援を求める家庭が後を絶たない。支援団体の活動とそこから見える沖縄の困窮家庭の現状を追った。(問山栄恵)

 県独自の緊急事態宣言に伴う休校が続く8月下旬の那覇市。午後3時、同市で無料や低価格で食事を提供する子ども食堂などを運営する「子ども広場in那覇」に、弁当が次々と運び込まれていく。夏野菜のナスやトマトが彩りよく添えられた和風カレーに、ハンバーグや魚フライ、ゆで卵などがご飯にのった弁当の2種類計59個。夕方に16世帯へ配達するものだ。

 教室ほどの広さの室内には10人ほどの子どもたちが、ゲームをしたり、漫画を読んだり、歌を歌ったりと、思い思いの時間を過ごしている。子どもたちのにぎやかな声が響く中、代表理事の細田光雄さん(65)の妻、茂美さん(65)が、手際よくビニール袋に弁当や無料提供された菓子パン、おにぎり、ヨーグルト、お菓子、パックの飲み物などを詰めていく。袋は、食べ物でぱんぱんになっていく。光雄さんは「つらい思いをしている子どもたちも、おなかがいっぱいになれば、少しは幸せになれるのではないか」と話す。

 子ども広場では、新型コロナの感染者が出始めた3月から緊急支援として弁当配布を始めた。最初は3世帯だったが、現在は那覇市内の50世帯に約120食、日曜日を除く毎日、弁当を届けている。子ども食堂の運営に加え弁当配達で1日の労働は13時間に及ぶ日もある。

 光雄さんは、困窮家庭の生活が厳しくなっていると実感する。

 4月ごろ、支援を求めて子ども広場を訪れた親子がいた。3人の子どもたちに「どれでも好きな弁当を食べていいよ」と言うと、3人の子どもたちは1個の弁当を分け合って食べ始めた。「1人1個食べていいんだよ」と言うと、子どもたちは驚いていたという。光雄さんは「普段から分け合って食べているからだろう」と悲しげな表情を浮かべた。

 記者の取材中にも光雄さんの携帯電話には、那覇市社会福祉協議会から新たな弁当配布を依頼する連絡が入る。弁当の配達の依頼電話は週3回のペースであり、日に日に増えている。「景気の先行きは見えない。今は貯蓄や給付金などでなんとか持ちこたえている家庭もあるが、秋から来年に向けてさらに厳しくだろう」