困窮世帯の食卓は② 夕食はスティックパン1本… 配布弁当が支え 「HOPE LOVE」<新型コロナ 暮らしの現場>


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配達する弁当をつくる「HOPE LOVE」のスタッフ=8月、うるま市

 長引く新型コロナウイルスの影響による景気の落ち込みが、困窮家庭をさらに厳しい経済状況に追い込んでいる。増え続けていた沖縄県の雇用は減少に転じ、立場の弱い非正規労働者を中心に雇い止めや勤務時間の短縮を強いられている。「冷蔵庫に何もない。何か持ってきてほしい」「助けてほしい」。県内のフードバンクや夕食宅配、子ども食堂などを運営する支援団体には、支援を求める家庭が後を絶たない。支援団体の活動とそこから見える沖縄の困窮家庭の現状を追った。(問山栄恵)

 8月下旬の午後2時すぎ、うるま市で困窮家庭に夕食を宅配する活動を行っている「HOPE LOVE」でもスタッフが弁当作りに励んでいた。メインのタンドリーチキンの刺激的な香りが部屋中に漂い食欲を誘う。この日はスタッフ4人で60食を作っていた。

 代表の仲真ナオミさん(59)は「うるま市は、低所得の家庭も多く、子どもの数も多い。私が知っている限り多いと13人の子どもがいる。ダブルワークをしている親も多く、それでもぎりぎりで生活している。そういった元々厳しかった人がコロナでさらにきつくなっている」と語る。

 「HOPE LOVE」では、コロナ前は平均20~30個の弁当を提供していたが、最初の感染拡大で学校が休校した約2カ月間は、1日で最高100食を提供していた。現在は平均60個を提供するが、弁当の要望は増えている。

 仲真さんは「勤務時間を減らされ、収入が半減したという話を多く聞いた。6人の子どもを育てているシングルマザーの家庭では子どもの夕食がスティックパン1本というケースもあった。そんな子どもたちに必死になって弁当を配った」と振り返る。食料でなく弁当を配布することについては「母親たちはみんな生活に疲れている。それにガスも使えない家庭もある、弁当が一番助かる」と話す。

 コロナ禍の中、仲真さんの団体には、さまざまな事情を抱えた家族が支援を求めに来る。小学校3年生の長女から1歳未満の乳児まで4人の子どもを一人で育てている20代の母親は、自身と三男に、コロナ感染が疑われる熱とせきの症状が続き、自宅から出ることができなくなった。母親は介護士として働いていたが、これをきっかけに働けなくなり、月収は3万円までに落ち込んだ。4人の子どもたちの食費を賄うこともできず、仲真さんの団体に助けを求めた。

 学校からの依頼も増えてきている。現在、母親が病気で入院し、高校生がひとりで暮らす家庭に週2回、弁当と食材を届けている。仲真さんは「同年齢の子どもに比べ、とてもやせていた…」と言葉を詰まらせた。

 生活のために借金をする家庭も多いという。支援する家庭の中には出産したばかりの子どものおむつとミルク代が捻出できず、借金を繰り返している女性のケースもあった。最近は、家賃が払えずに借家を出たという話を耳にするようになった。仲真さんは「8人家族が賃貸住宅を出て、親類の家に身を寄せていると聞いた。今後は家賃を払えないという家庭がもっと増えると思う。困窮家庭はますます追い込まれていく」と懸念した。