斬新な視点で琉舞を紹介 野外で撮影し表情に迫る 「古典女七踊り」写真集を発刊


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「琉球舞踊 古典女七踊り写真集 ウミサトゥユ」の表紙

 アマチュア写真家の上田雄士さんがこのほど、「琉球舞踊 古典女七踊り写真集 ウミサトゥユ」(リーブル出版)を発刊した。屋外で若手女性舞踊家7人がそれぞれ、古典女七踊を一題ずつ踊る姿約40点を収めた。屋外での琉舞撮影という斬新な切り口や舞台写真であまり見られない踊り手の表情に寄ったカットなど、新鮮な驚きを与える意欲作に仕上がっている。

 タイトルの「ウミサトゥユ(思里よ)」は、「本貫花」の白瀬走川節の歌詞などにある、女性が思いを寄せる男性を呼ぶときに使う言葉。古典女七踊は、古典舞踊を代表する女踊の「伊野波節」「諸屯」「作田節」「かせかけ」「柳」「天川」に、「本貫花」もしくは「苧(ヲゥ)引き」を加えた七つの踊りを指す。女心を抑制的に表現した歌や踊りを中心に構成されている。

 写真は那覇市の福州園や識名園、南城市の糸数城跡、糸満市の米須海岸など、県内各地で撮影した。また、舞踊に合う季節も考慮したため、撮影は2017年12月から19年7月まで、約2年かけた。踊り手に福島千枝、知念亜希、富原結、伊志嶺梓、儀間佳和子、親川あやの、仲嶺夕理彩が出演している。

アマチュア写真家の上田雄士さん(本人提供)

 上田さんは京都出身。大学卒業後、劇団活動に身を投じ、東京で活動した後、2008年に翻訳会社に就職。会社を辞めて15年に沖縄に移住した。現在はフリーの翻訳家を本業としている。沖縄には02年から毎年旅行で訪れ、琉球舞踊にもその際に出会った。「琉球舞踊の中でも古典舞踊は、動きは少ないのに見終えた後、1本のドラマや映画を見たのと同じような感覚を覚えた」と振り返る。

 以後、来沖の度に舞台に足を運んだ。移住後も那覇市の首里城公園近くに住み、同公園の舞台に足しげく通った。やがて、琉舞をはじめ沖縄の自然を多くの人に伝えたいと思い、写真集の発刊を決めたという。作品のイメージに合う舞踊家を決め、舞台に足を運ぶ中で知り合った舞踊家を通し出演を依頼した。

 写真を発信するだけならばSNSを利用する方法もあったが、自費出版を選んだ。

 上田さんは「写真は古典舞踊の持つ『ストーリー性』を重視したが、SNSではそれが伝わりにくい。また、手元に置いて何度でも見られるようにしたかった。踊りの解釈は幅があり、その人の人生の変化に伴い受け取り方が変わるのではないかと思う。いろいろな想像を巡らせて写真集を見てほしい」と話した。

 写真集は現在、ネット販売のほか、県内ではジュンク堂那覇店で取り扱っている。価格は1600円(税抜き)。