経営難の会社に声掛け… コロナ給付金の不正受給、困窮者につけ込む仲介人の存在


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持続化給付金が入金された男性オーナーの通帳=9月、県内(画像を加工しています)

 「コロナの影響で経営難となった会社などに声を掛けて回る人物がいる」。沖縄県内で飲食業を営む男性オーナーは、ここ数カ月で幾度も持続化給付金や助成金の受給あっせんの話が舞い込んできたことを証言する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減った中小企業や個人事業者を救済する目的の給付金などを巡り、県内で不正受給をあっせんし、手数料などを徴収するブローカーの存在が浮かび上がった。

 新型コロナの影響で経営環境が悪化したことから、男性オーナーは3月以降、採算が見込めない店舗を閉めるなど対応に追われた。5月に持続化給付金を申請、約3週間後に限度額の200万円が振り込まれた。「店の家賃や人件費の支払いで給付金は1カ月と持たなかった」とため息を漏らす。

 知人の経営者の中には、限度額いっぱいの入金を求めて不正な会計処理に手を染める人も少なくないという。「減収を証明するため、売上金を少なく見せた書類を作成して申請する経営者も多い。数字をいじるだけなら誰でもできる」と明かす。緊急事態宣言が2度も出され先行きが見えない中、男性オーナーの元には「必要な書類を提供してほしい。コロナ助成金や融資を受け取れるだけ受け取り、計画倒産しよう」などと、ブローカーとみられる男から接触があった。

 別の男からは「法人とは別に個人事業者としても、給付金申請しないか」と話を持ち掛けられた。休眠会社の買収や名義貸し、コロナに関する特別貸付なども狙われているという。男性オーナーは「コロナ禍に乗じてブローカーらがつけ込む詐欺まがいの話が飛び交っている。今後、不正防止のため申請手続きが厳格化されることになれば、コロナで困窮する人たちの救済が遅れる。放っておくと、県内経済回復の足かせになりかねない」と危機感を募らせる。

 給付金の不正受給などに詳しいフリーライターの奥窪優木氏は「持続化給付金を含む政府肝いりの経済政策は、詐欺師や反社会勢力を活気づかせ食い物にされている」と警鐘を鳴らす。「政府による巨額経済支援の原資は税金であり、目的外に流出している構造的な問題について検証する必要がある」と訴えた。

 県内では持続化給付金の不正な申請が400件に上るとされ、県警は虚偽申請のあっせんや指南役とみられる人物らの特定を急いでいる。 (高辻浩之)