ザトウクジラ ロシアから沖縄に南下時、北海道を経由 学術的裏付けは初 美ら島財団


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上段は北海道釧路沖、下段は沖縄県慶良間諸島沖で確認されたザトウクジラの尾びれ。(1)尾びれ上端部形状(2)左右両端の白い模様形状(3)右下の白い線状傷が一致している(沖縄美ら島財団提供)

 【本部】沖縄美ら島財団総合研究センター(本部町)は10日、ロシア、沖縄、フィリピン間を回遊するザトウクジラが北海道を経由することを明らかにした。ロシアなど餌場の海域から、繁殖の場となる沖縄などに南下する際に北海道へ来遊するとされる。沖縄と北海道の周辺海域で撮影した個体写真を照合し確認した。北海道を経由地にすることが学術的に裏付けされたのは初。ザトウクジラの生態解明や保全につながると期待される。

 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター(函館市)と共同研究を行った。2018年10月15日に北海道釧路市沖で発見された5頭のうち1頭の尾びれの写真が、沖縄の本部半島や慶良間諸島周辺海域で過去3回、確認された個体のものと一致した。ロシア―沖縄間では計69体、フィリピン―沖縄間は計100体の同一個体が海域を回遊していることが確認されている。沖縄―北海道間の確認は初となる。個体が北海道を経由した理由は分かっていない。

 ザトウクジラは移動が広範囲なため、回遊経路など未解明な部分が多かった。沖縄美ら島財団総合研究センターの小林希実研究員は「明らかとなった生態を観光業者に伝え、(ホエールウオッチングなどの)ツアー内容をさらに充実させることができる。今後の保全活動の指標にもなる」と語った。

 今回の研究は7月、日本哺乳類学会の学術誌「哺乳類科学」の第60巻第2号に掲載された。