【記者解説】想定外だった首里城正殿からの夜間出火 再発防止委が報告 火が大敵の建築物に備えなく


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 第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」(委員長・阿波連光弁護士)がまとめた中間報告で、正殿からの夜間出火は想定外だったことが改めて浮き彫りとなった。正殿をはじめとした建築物群は当初から火災に脆弱(ぜいじゃく)という課題があったが、国や県、沖縄美ら島財団も十分に認識していなかったとみられる。

 防災訓練が十分に実施されておらず、消火設備は正殿外部からの火災防止を重視していた。2026年度に予定される正殿の復元は南殿、北殿も含めて「想定外の事態」を想定して進める必要がある。

 正殿は建築基準法の適用除外を受ける特殊な木造建築物で、しっくいや土壁が使われていない。美観を守る上でも消防法では義務付けられていないことからも、内部にスプリンクラーは設置されていなかった。

 火災当日に勤務していた警備員や監視員は夜間を想定した防災訓練を受けていなかったため情報共有が滞った。119番通報したのは首里城外部で人感センサーを監視していた警備会社の職員で、直接目撃してはいないので火災状況を詳しく伝えられなかった。

 駆け付けた消防隊は門が施錠されていることを知らされず、無理やり破壊するタイムロスがあった。城の構造上、外部から入りにくく消防が火災現場に到達するのには時間がかかった。また、城郭外の消火栓からホースを長距離に延ばさざるを得ず、消火活動には支障が多かった。

 正殿からの火災は周辺への被害を拡大させた。阿波連委員長は「正殿から火が広がることを念頭に置いていなかった可能性がある」と指摘した。国と県、沖縄美ら島財団はこうした教訓を踏まえた改善が求められる。

(梅田正覚)