「サトウキビからコンクリート」強くて環境に優しい新素材開発中 琉大のブラジル出身研究者


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 京都大学大学院生で、4月から琉球大学工学部に客員研究員として訪れているブラジル出身のブルノ・リベイロさん(31)が、サトウキビのバガス(搾りかす)を使ったコンクリートの研究に取り組んでいる。環境負荷が高く二酸化炭素の排出量が多い土木業界で、持続可能な建設資材の開発に取り組む。リベイロさんは「環境に優しい材料を開発し、選択肢の一つになれば」と話す。

バガスを使ったコンクリートの研究開発を行う、京大院生のブルノ・リベイロさん=7日、琉球大学

 コンクリートの原材料はセメントと水、砂、石。砂の海底採取は環境破壊が指摘されているほか、県内の離島によっては海外から砂を輸入する地域もあり、運搬の際に排出される二酸化炭素の環境問題もある。

 リベイロさんの研究は、砂を最大7%減らし、代わりにバガスとバガス灰を混ぜてコンクリートを製造する。バガスの繊維で通常のコンクリートよりも曲げ強度が強くなった。保水性も高く、表面温度は通常より4度低い。

 今後は歩道ブロックのほか、橋などの構造物、ダムや堤防などの防災構造物で導入されることを目指す。実用化に向けて、耐久性の研究も行う。

バガスやバガス灰を使ったコンクリート

 出身地のブラジルは世界最大のサトウキビ生産国。父親もサトウキビを作っていたことから、リベイロさんが幼い頃からサトウキビは身近な存在だった。2018年から京大大学院の博士課程でバガスを使用したコンクリートの研究を開始。19年3月に研究材料のバガスを集めるため沖縄を訪れたことをきっかけに、沖縄のサトウキビ産業に興味を持った。

 リベイロさんは「サトウキビは世界100カ国以上で作られる。バガスを使ったコンクリートの製造技術があれば、世界で応用できるだろう」と話す。

 サトウキビの製糖工場で大量に出るバガスは工場の燃料として再利用されるが、余ったバガスやバガス灰の処理が難しく、課題がある。海外では製糖工場が年中稼働する国もあり、バガスの保管場所の問題や、灰による環境問題も指摘されている。

 リベイロさんは9月末に県内での研究を終える。バガスのコンクリートを県内で導入するプロジェクトを実施したいと考えている。「身近にある物で環境に優しい物を作りたい。持続可能な社会につなげたい」と話した。