院内感染を断て! クラスター対策班、療養所の奔走 自衛隊や他県からも支援


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 療養病床を備え、継続的な医療や終末期医療などを必要とする患者を受け入れている糸満市のウェルネス西崎病院で8月、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。6日から13日にかけて3階病棟の入院患者10人と職員5人の感染を確認した。特定非営利活動法人ジャパンハート(東京)の看護師らも参加した沖縄県のクラスター対策班や病院職員らは、感染対策や入院患者の治療に奔走し院内感染を抑え込んだ。現在、対策班の取り組みは解除しているという。

クラスターが発生したウェルネス西崎病院で患者の治療を支援するジャパンハートの看護師=8月、糸満市の同病院(ジャパンハート提供、一部画像処理しています)

 ジャパンハートの職員らは県の相談を受け15日から支援に加わり、17日に現場入りした。当時、県内ではクラスター発生が相次いでいた。県による現場対応も混迷し、常駐での病院支援も追い付いていなかった。陽性者が出た病室を区分するゾーニングや動線の明確化など、課題として感じた感染対策や管理の見直しから始めたという。

 エリアは陽性者が出た区域をレッドゾーン、感染者がいないエリアをグリーン、判然としない病室をイエローにそれぞれ区分。介入前はエリアごとの人員分担ができていなかったが、自衛隊や他県からの支援看護師の増員もあり、エリア担当者を分けて業務することを確認しながら入院患者の看護に当たり、院内感染の防護につなげた。

 中でもレッドゾーンはウイルスを外に出さないため、出入りする職員を制限する必要があった。不足する人員を補うため、ジャパンハートの看護師はレッドゾーンを支援した。患者は以前から身体機能が衰え、療養する高齢者が多い。入院患者によっては新型コロナによる影響があるかどうかの見極めは難しく、経過観察の解除に向けて、たんの吸引や血圧検査など治療や介護に専念した。高齢患者には慢性的に発熱症状を繰り返す人もいて、症状の原因や回復の判断の難しさに直面しながらの治療だったという。

 病院でのクラスター事案について、ジャパンハートの佐々木蓮国際緊急支援事業コーディネーターは「福祉施設の入所者の場合は陽性者を外に出すことができるが、療養型の病院はすぐにできない。病棟を区切ってウイルスを絶対に外に出さないことが大きな違いだ。対応するべき工程も多く、病院の職員と共通の意識で対策することの重要性を実感した」と振り返った。クラスター対策として「(広域で)必要なところに必要な医療スタッフを届ける計画や支援態勢をつくることが望ましい」と強調した。

(謝花史哲)