[日曜の風・香山リカ氏]民主主義の輝き 沖縄と声を上げよう


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 2012年12月から7年8カ月続いた安倍政権が終わる。その間、14年12月から18年8月8日に生涯を終えるまでは、翁長雄志氏が沖縄県知事を務めた。翁長氏は何度も「県民は不屈の闘志で」と呼びかけた。

 翁長氏が知事に就任する前年の1月28日には、県内の38市町村長、41市町村議会議長らからなる代表団が、政府に「オスプレイの配備撤回と普天間基地の県内移設断念を求める建白書(通称・建白書)」を提出した。前日の27日には、県内全41市町村の首長らが東京で集会を開き、銀座をデモ行進した。

 こうやって書いているだけでも、鳥肌が立ってくる。安倍政権が次第に力を増大する時期に、沖縄ではまさに民主主義が燃え盛っていたのだ。

 翁長氏亡き後は、新基地反対を訴える玉城デニー氏が知事選に当選した。昨年2月の県民投票では、辺野古埋め立てによる新基地計画について「反対」が72・15%に達した。安倍政権が権力をほしいままにする中でも、沖縄の民主主義の炎は消えなかったのだ。

 そのつど、東京など内地でも喜びの声が上がった。国会前での集会のスピーチでも、「沖縄に続きましょう!」というフレーズが何度も聞かれた。誰もが沖縄の勇姿に励まされたのだ。しかし、辺野古の埋め立てはいまも続いており、新総理と目される菅義偉官房長官も辺野古移設推進派である。

 沖縄は、日本の民主主義の最後の砦(とりで)だ。安倍政権を通して、沖縄の人たちはまさに「不屈の闘志」でそれを守り続けた。さあ、あとは内地の私たちがどう後押しするかだ。「すばらしい」と拍手しながら見ているのはもうやめて、新政権に切り替わる今こそ、沖縄とともに声を上げよう。

 もちろん沖縄の観光や文化を楽しむのもよい。でも、忘れてはならないのは、沖縄のこの民主主義の輝きだ。そう気づいたら、誰もがもはや傍観者ではいられなくなるはずである。今度こそ、権力者ではなく私たちの番である。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)