新総裁の菅氏 那覇第2滑走路に注力 知事選でUSJ誘致主張も


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那覇空港第2滑走路

 菅義偉氏が自民党総裁に選出され、16日の臨時国会で新首相に指名される運びとなった。菅氏は7年8カ月にわたる第2次安倍政権で一貫して内閣の要となる官房長官を務め、沖縄を巡る問題にも長く影響力を行使してきた。那覇空港第2滑走路の完成前倒しや北部テーマパーク誘致など、沖縄の産業界とも深い関わりを築く。

 県内経済界の悲願だった那覇空港第2滑走路の整備事業は当初、7年の工期を予定していた。当時の仲井真弘多知事の強い要請を受けて政府は滑走路建設の予算を増額し、工事計画を5年10カ月に短縮して完成を急いだ。今年3月に第2滑走路が運用を開始し、県内の経済関係者には「官房長官の一声で工期が短縮できた」と菅義偉氏の手腕を評価する声が多い。

 また、2本の滑走路で安定的に運用できる回数(滑走路処理容量)も当初は18万5千回にとどまる想定だったが、菅氏は「飛行経路を見直すことによって24万回まで引き上げる」として、国土交通省に処理容量の拡大を実施させた。

 3月の運用開始時には、新型コロナウイルスが感染拡大している状況にもかかわらず記念式典に出席するためだけに来県し、事業への思い入れを見せていた。

 2014年11月、仲井真弘多元知事が3期目を目指した県知事選で菅氏は経済界の決起大会に出席し、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の誘致に「沖縄振興の要として政府も応援したい」と発言した。同選挙で仲井真氏が落選した後も、USJの沖縄進出について「政府としてできる限りの支援をしたい」(15年3月)と、一企業の沖縄進出に対して異例の支援方針を表明した。

 官邸側の窓口となった和泉洋人首相補佐官が本部町の国営海洋博公園などを視察し、「沖縄全体の発展にプラスになるのであれば規制改革を検討したい」と発言。国家戦略特区などの検討が官邸主導で進んだ。

 しかし15年11月にUSJ運営会社の親会社が変わったことで計画は見直され、16年5月に県と政府に沖縄進出の撤回が伝えられた。

 18年9月には、翁長雄志前知事の死去に伴う県知事選で、政府与党が全面支援した佐喜真淳氏の選挙応援で精力的に沖縄入り。応援演説で「4割程度引き下げる。そうした方向に向かって実現したい」と訴え、携帯電話利用料の値下げを主張した。

 この前月に、菅氏は札幌市での講演でNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社の高い利益率を挙げ、料金は「4割程度下げる余地がある」と発言。佐喜真氏の政策集にも「携帯電話利用料の4割削減を求める」と記載していた。官房長官による民間事業者に対する異例の「値下げ発言」は知事選を意識したものだという指摘もあったが、知事選で訴える公約として疑問の声もあった。選挙では佐喜真氏が敗れた一方、大手3社はその後、値下げの求めに応じ割安なプランを出した。

 今回の総裁選でも、菅氏は13日の民放の番組で携帯電話料金引き下げに意欲を示している。