いまは科学者が戦争を 意識しなくなってしまった 言葉を刻む(14)


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いまは科学者が戦争を 意識しなくなってしまった

益川敏英さん(ノーベル物理学者)

 

 ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英さんは、科学者の軍事研究への加担に反対し続ける。

 原点は幼少期の空襲体験。屋根を突き破った焼夷弾が目の前に。不発弾で助かったが、火の海となった名古屋の町を両親と逃げ回った。

 現在、防衛省や米軍に協力すれば潤沢な研究費が得られる。益川さんは軍学共同の再来を憂い、「我々科学者が戦争がどういうものか、注意を喚起していく必要がある」と訴える。

(2017年、京都新聞取材=当時77歳)

 翌年4月20日、浦添市の伊祖高地で戦死。23歳の若さだった。しばらくして兄の戦死公報が家に届く。線香を立てて拝んでいた母の背中が今でも忘れられない。

 終戦後、沖縄を慰霊で訪れ、手を合わせると涙がこぼれた。「兄のことを考えると今でも胸が詰まる。きっと帰りたかったんだろう」

(2017年、京都新聞取材=当時83歳)