県民に期待と警戒 菅内閣発足 「住民の生の声聞いて」 子育て・若者政策にも注文


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辺野古埋め立て用土砂を運ぶ大型車に抗議する人々=16日、名護市安和の琉球セメント桟橋

 名護市辺野古の新基地建設など、沖縄の基地問題や経済振興に深く関与してきた菅義偉首相率いる内閣が16日誕生した。沖縄関係閣僚の顔触れを見ると、安倍内閣の路線継承が色濃く反映されている。県民からは新型コロナウイルスで大打撃を受けた県経済への対策に期待の声がある一方、基地問題では「より強硬姿勢になるのでは」と危惧する声も上がった。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設で、沖縄防衛局は16日、名護市安和の琉球セメント桟橋や本部町の本部港塩川地区で辺野古への埋め立て用土砂搬出を続けた。菅義偉氏の首相就任に、基地建設に抗議する人たちからは「安倍政権の継続でしかない」と警戒する声が聞かれた。

 本部町島ぐるみ会議の原田みき子さん(71)は、菅氏の出身地・秋田県で地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備が断念されたことを指摘。「血税を使い沖縄の資源を破壊し、戦時下に標的となる新基地建設も断念してほしい」と訴えた。安和桟橋前で抗議をしていた新垣勉さん(67)=南風原町=は菅政権の誕生に「基地建設を強硬する姿勢は変わらない」と述べた。

 官房長官時代の菅首相とたびたび対話したことがある東村高江区長の仲嶺久美子さん(70)=東村=は「菅首相には騒音問題など高江の現状を伝えてきた。沖縄の状況をよく知っていると思う。河野太郎沖縄担当相を含め、基地問題について、どれだけ米側に意見を言えるかが問われる」と期待をにじませた。

 会社員の花城可人さん(48)=北谷町=は「保革を問わずに意見を聞く政権であってほしい」と望む。沖縄担当相には「できれば住民の生の声を直接聞くなどの場を設けてほしい」と求めた。新産業の創出も視野に入れた経済振興も県と協力して進めてほしいと訴えた。

 石垣市の江川義久さん(75)は「派閥や当選回数で決まった印象だ。若くて能力のある人が大臣となる台湾などがうらやましい。沖縄にとって対応の悪い政権が続くと感じるが、『意外と悪くない』と感じられる政治にしてほしい」と願った。

 宮古島市の自営業、下地辰男さん(69)は前厚労相で、新たに官房長官となった加藤勝信官房長官に対して「コロナの検査基準を巡り、意味が通らない発言をしたことを覚えている。ごまかしのような論法で、大丈夫かなと不安だ」と話した。

 那覇市の中心商店街で雑貨を販売する安田雅一さん(39)は新内閣に新型コロナウイルス対策の強化を求めた。「(廃業する店が出て)街の風景が変わっている。安全に外国人観光客が訪ねられる対策や、それまで事業が持続できる支援もしてほしい」と要望した。

 南城市の男性会社員(24)は「安倍内閣の継続みたいで、新しくなった印象はない」ときっぱり。「子育て政策や若者が暮らしやすい政策に力を入れてほしいが、女性が少ない上、年齢層も高い顔ぶれなので、あまり期待できない」との評価だった。