与那国の風、歌声に乗せて 「野性味の魅力」興那覇有羽が初アルバム


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 与那国島の唄者・與那覇有羽(ゆうう)(34)が初アルバム「風の吹く島 どぅなん、与那国のうた」(リスペクトレコード)を23日、全国発売する。与那国民謡を中心に21曲を、ディスクの収録時間が許す限り詰め込んだ多彩な1枚に仕上がっている。

 與那覇は、与那国町祖納出身。中学卒業後、南風原高校に進学するため本島に移り住んだ。同高郷土芸能部に所属し、県立芸術大学音楽学部に進学した。しかし、学術的体系にとらわれず島の歌を歌いたいとの思いから、2011年に島に戻った。現在は民具作りの傍ら、行事や祭りを通して島の先輩たちから芸能を学ぶ日々を送る。

 アルバムには、与那国島を代表する「どぅなんとぅばるま」や「どぅなんすんかに」、島の童唄、葬送歌の「みらぬ唄」など幅広い楽曲を収めた。「六調節」は床に伏していた祖父が與那覇の演奏に歓喜し思わず踊り出したなど、一つ一つが思い入れの深い曲でもあるという。収録には與那覇の妻・桂子や妹・太田いずみ、島の笛吹き・山内和昭も参加した。

 三線を伴わないジラバやわらべ歌など7曲が収録されているが、中でも「若船(ばがふに)でぃ(じ)らば(らば)」は秀逸。伸びやかな歌声が聞き手の心中に、心地良い島の風を吹かせてくれる。また、「どぅんた」で、上げ調子と下げ調子の両方の歌い方を入れるなど、島の歌を愛し研究に余念のない與那覇らしい、歌への誠実さも感じられる。

 アルバム制作に関わった島唄解説人の小浜司は「有羽の良さは野生味。畑に植えた苗は、鉢に植えたものより育つのは遅いが、やがて立派に実る。有羽は、与那国の歌の魅力を確かに感じさせる歌い手だ」と目を細める。

 與那覇は「与那国の歌を知るきっかけになれば、ありがたい」と話した。
 (藤村謙吾)

初アルバムを発売した與那覇有羽=8日、那覇市の琉球新報社
与那国島の歌21曲を収めた「風の吹く島 どぅなん、与那国のうた」