4400年前の沖縄は北風が今より強かった? 琉大研究チーム サンゴ化石で季節風分析


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現在の海で見られるハマサンゴ(提供)

 先史時代の沖縄の冬は、現在よりも冬の北風が頻繁に吹いていたかもしれない―。東北大学大学院理学研究科の浅海竜司准教授や琉球大学理学部の藤田和彦教授らは14日、那覇市若狭公園の地下に眠っていたサンゴの化石を分析し、約4400年前の季節風の変化を1~2カ月という細かい間隔で割り出すことに成功したと発表した。研究結果から、当時の沖縄本島は冬に東アジアモンスーンの影響を大きく受け、冬の北風が強かったことが分かったという。

 東アジアモンスーンは、ユーラシア大陸と太平洋の間に季節的に生じる熱量の違いによって起こる気象現象で、沖縄では冬に北風、夏に温かくしめった南風を吹かせる。

 近年、鍾乳石や深海堆積物などの解析が盛んに行われ、東アジアモンスーンの変動記録が蓄積されているが、数年から数十年間隔の変化を捉えるのが一般的だった。今回の研究は1年の季節変化が分かる時間間隔で分析することに成功した。約4400年前の沖縄は夏の海水温が現在と同水準なのに対し、冬は1~2度程度低く、変動幅が大きいことが判明した。

那覇市若狭公園で採取されたハマサンゴ化石のレントゲン写真(提供)

 研究の鍵となったのは、那覇市若狭公園の地下から採取されたハマサンゴの骨格化石だ。ハマサンゴは樹木のように明瞭な年輪を形成することで知られる。研究チームは骨格中の元素分析を高精度で行うことで、海水温や塩分濃度の変化を時系列でまとめた。

 時系列データは最長で53年分あり、研究チームは「当時の東アジアモンスーン変動の季節変化や、年変化を長期的に評価できる初めての古気候記録と言える」と胸を張る。

 ハマサンゴの化石は那覇の沿岸環境の変化を調べるため、藤田教授らがボーリング採掘していたところ、偶然、採取された。発見当時、琉球大に所属していた浅海准教授らが分析を進めた。

 藤田教授は「現在も冬に寒さで魚が死ぬことがある。大昔の沖縄では、そのようなことが今より頻繁に起こっていたのだと思う」と話した。

 研究結果は地球科学分野のトップジャーナルの一つ「ジオグラフィカル・リサーチ・レターズ」の8月号に掲載された。