「もったいない」を生かした商品で島の魅力を伝えたい―。県内から沖永良部島に移住した宮澤夕加里さん(38)は、商品化できないジャガイモや蜜ろうをベースに、廃棄されるイカスミや果物の皮を色素に使ったクレヨンや粘土を作っている。いずれも島で取れたものばかりで「クレヨンや粘土を通して島に関心を寄せてくれたら」と思いを託す。
宮澤さんは大阪出身で2018年まで沖縄で暮らした後、夫の転勤で沖永良部島に移住。島の手作り市に行き「島の素材を使って自分も作ってみよう」と思い立った。
動き始めると「島の人たちが本当に温かく応援してくれた」と宮澤さん。いろんな情報やアイデアを持ち寄ってくれたという。主原料の蜜ろうは、果樹農家が受粉用に飼うミツバチの巣から蜜を取った後、使われずに保管されていたものを安く譲り受けた。
色素は、赤は島の赤土、緑は特産品シマ桑の青汁のうち期限が切れたもの、黄色はミカンの皮、黒は船上で廃棄されていたイカスミ…と、使われない天然資源を細かい粉末にして練り込んだ。琉球藍の提供など沖縄からの応援も受けて試行錯誤を繰り返して8色を確保。ことし2月「えらぶ色クレヨン」を商品化した。
さらに、島の特産品ジャガイモも傷や病気のために出荷できずに廃棄されるものが多数あることを知り、ジャガイモのでんぷんを使った「ジャガイモねんど」作りに着手した。
農家の久本和秀さんも「廃棄する規格外は食品には転用できない。食品ではない商品に再利用する取り組みを応援する」と喜ぶ。宮澤さんは「島の自然素材を使い、フードロスを減らすというストーリーに関心を寄せる都会の人もいる。これを機に島と都会の交流が生まれたら」とも期待した。
「ジャガイモねんど」は大量のジャガイモをすりおろす機械の購入費などをクラウドファンディングで募っている。目標は100万円で20日まで。詳しくは「ジャガイモねんど」で検索。
(黒田華)