沖縄進出の経緯、路線バスへの展開は?東京バス・西村社長に聞く


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 沖縄初進出となる東京バスが14日から、那覇空港からイーアス沖縄豊崎を結ぶ路線バスの運行を始めた。10月からは糸満市役所から久茂地間の運行も始まる。西村晴成社長に沖縄進出の経緯や、今後の展開などを聞いた。

東京バス社長 西村晴成氏

 ―沖縄進出の経緯は。
 「妻が沖縄出身で、これまで沖縄に何度か来ていた。その時に走っているバスの古さを見て驚いた。貸切バス事業で県外から沖縄に進出してきている会社が複数いるが一部はかなり古いバスで、いつ事故があってもおかしくないと思った。また県外企業の評判が良くないということを聞いてショックを受けた」

 ―路線バスの展開は。
 「現時点で路線バスの新規開拓は考えていない。元々メインは貸切バスだが、糸満から那覇空港までのバスの移動が非常に複雑だということを従業員から聞いて路線事業もやることにした。基本的に他社と被らない路線を運行する」
 「路線バスの定時運行にはかなり配慮した。既存の路線バスは、地域の足としてどうしても停留所が多く、細かく停まると間違いなく遅れが生じる。停まるバス停を少なくすることで定時運行する。今後、乗車人数が多い時間帯は特急や直行便の運行も考えている」

 ―コロナ禍をどう乗り切るか。
 「今はとにかく辛抱する。来年の今頃まで現状が続くとは思っていない。団体旅行はしばらく厳しいが、全国的にも学校行事が再開している地域がある。今後県内の遠足などの学校行事を獲得していきたい」

 ―経営上の目標は。
 「3年以内に黒字化を目指したい。地元の人に認知してもらうまでに最低でも3年はかかる。単純にお客さんに乗ってもらい、バス内の広告で稼ぐのではなく新しいことをやりたい。例えばハリウッドのC級、D級映画を仕入れてきてバス内で見せるなど、バスに乗らないと体験できないサービスを提供するなど工夫して展開したい」

 ―沖縄のバスの課題は。
 「路線網が複雑で分かりにくい。県外から来た人が路線バスを使って観光地に行こうというのはほぼない。だからレンタカーを使い交通渋滞につながる。乗り換え案内などが分かりやすくなれば、観光客や県民の利用者が増えてくる」
 「沖縄の貸切バスは、春先や10~12月の限られた季節しか需要がない。東京や大阪などはオフシーズンでも一定数は仕事があるが、沖縄はピーク時との差が大きい。貸切バスの料金も全国より低く、バス運転手やガイドの低所得につながっている。今後、沖縄のオフシーズンには東京の営業所に従業員が出向する体制なども検討する。東京では東京基準の給与となる」

 ―意気込みは。
 「早く県民の皆さんに認めてもらい『あの会社は東京だけどうちなーの会社だよ』と言ってもらえるように努力する」

(聞き手・中村優希)