西原町長選の投票率低迷 一騎打ち、争点見えず 4カ月で選挙3度 識者「啓発に工夫を」


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 【西原】13日投開票され、崎原盛秀氏(63)が初当選を果たした西原町長選の投票率は47・60%で、戦後最低だった。新型コロナウイルス感染症の影響もあったとみられるが、西原町内では6月の県議選、7月の町議補欠選挙に続く今年3度目の選挙。町民からは「また選挙なのか」と“選挙疲れ”の影響を指摘する声も聞かれた。また町長選では崎原氏と小橋川明氏(68)の新人2人が一騎打ちを展開したものの、共に「元町職員で、上間明町長の下で副町長経験がある」「『オール沖縄』の立場」など共通点も多く「争点が分かりにくい」といった声もあった。

 ■似たり寄ったり

 「どっちも似たり寄ったり」。2候補の公約が書かれた選挙公報を手に、西原町の女性(74)はため息をついた。どちらの公約にも「財政健全化」「子ども」「まちづくり」「平和」などの言葉が並ぶ。細かい具体策では違いがあるものの「同じに見える」。女性は迷った末、崎原氏に投票した。「崎原さんの方が5歳若いから。それだけ」と話した。

 小橋川氏に投票した60代女性は「(現町長の)上間さんが(小橋川氏を)応援していたから」。投票に行かなかった男子大学生(21)は「現職が選挙に出ていればそれまでの実績に対して評価できるが、どっちがなっても同じに感じた」と話した。

西原町長選の開票作業=13日夜、同町中央公民館

 ■無駄遣い

 選挙の予算は県議選1059万3千円、町議補選752万9千円、町長選827万4千円。町議補選は町長選、県議選へ出馬する町議4人が辞めたことに伴う選挙で、町民からは「町議が辞めるタイミングを合わせれば県議選や町長選と同時にできた。無駄な出費を抑えられた」と不満の声も上がる。

 西原町議会の定員は19人。崎原氏が町長選出馬のため、3月26日に辞職。3町議が県議選に出馬し、県議選告示日の5月29日に自動失職。欠員が計4人になった。

 公職選挙法では議員の6分の1以上が欠員となった場合は50日以内に補選を行うことが規定されており、7月5日の投開票が決まり、県議選と同時実施ができなかった。町議補選が単独で行われるのは村時代を含め戦後初で、投票率は34・40%。6月県議選の西原町内投票率48・12%より下がった。

 ■獲得した権利

 西原町の60代男性は「町議が辞めるタイミングを合わせれば2度で済んだ。全く無駄な出費だ」と話す。 沖縄国際大の照屋寛之教授(政治学)は町民の選挙への疲れや不満に理解を示しつつも「選挙権は長い闘いの末に獲得した権利だ。選挙で、自分たちの代表を選ぶことの大切さや、そのためにはコストがかかることも理解してほしい」と訴える。

 投票に足が遠のく背景には「自分たちの一票で生活が変わるという実感が感じられていないのではないか」と分析。「街頭での広報活動や高校で主権者教育の出前授業を行うなど、選挙管理委員会や『明るい選挙推進協議会』が投票率アップのための工夫にもっと取り組むべきだ」と求めた。 (荒井良平)