<識者談話>伝統行事の中止・縮小 神谷武史氏 行事の本質を見極める機会に


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神谷 武史氏

 豊年祭や奉納芸能は地域の若者たちの人間形成に大きな役割を果たしてきた。新型コロナウイルスの影響で伝統行事が通常開催されなかったことで、行事を生きがいにし、心待ちにしてきた人々の不安や苦しみは相当なものだろう。融和や豊年、安寧(あんねい)など伝統行事には地域それぞれの主目的がある。前例にない事態に直面している今年こそ、伝統行事の本質を改めて見極める機会にすべきだ。

 今年の伝統行事の中止や縮小をどのように決定したのかも重要だ。自治会の評議委員や有識者らと十分な議論をした上で住民に共有したのか。地域の組織力やコミュニティーの在り方を見詰める機会にもなる。いかに安全を確保した上で伝統行事を持続させていくのかが問われている。

 継承のためにできることはある。昔の伝統行事の写真を公民館などで展示したりするなど、伝統継承の歩みを止めないための取り組みが大切だ。奉納芸能の担い手の技術を記録し、動画配信するなどアナログとデジタルを融合させることも可能だ。

 若い世代には誰も経験したことのない疫病を乗り越え、いかに地域の伝統を受け継いできたかを次の世代に伝えてほしい。