浮島通りの元薬局、ギャラリーに 創業者の孫が再生「記憶に残るランドマークに」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【那覇】那覇市の浮島通りに1952年に建てられた旧神谷薬局の建物がギャラリー「あおみどりの木」として生まれ変わり、18日にオープンした。薬局の創業者である神谷朝恒(ちょうこう)さんの孫・當銘すみれさん(39)=旧姓・神谷=が中心となってリフォームし、建設当時の外観を再現した。すみれさんは「浮島通りの歴史を伝え、みんなの記憶に残るようなランドマークになればうれしい」と話す。

 旧神谷薬局は赤瓦屋根の木造2階建て。朝恒さん家族の店舗兼住宅だった。朝恒さんの長男ですみれさんの父の朝雄(あさお)さん(71)もこの場所で育った。朝雄さんは72年に大学を卒業し東京で就職。だが沖縄は日本復帰で通貨が変わるなど変革期を迎えていた。当時、薬局を主に切り盛りしていた母から「助けに来て」と頼まれ、数カ月で退職し家業を継いだ。「当時の浮島通りはメインストリートだった。生活用品の卸売り・小売店が多く、全島から仕入れに訪れた」と振り返る。その後、薬の量販店が増えたこともあり、朝恒さんが亡くなった93年に薬局を閉めた。

 すみれさんにとっても店番をしたり販促のディスプレーをおもちゃ代わりにしたりと薬局での思い出は多い。数年前に取り壊しが検討されたが、すみれさんが落成時の写真を発見した。当時の建物のかっこよさに「元に戻そう」と決意した。

 リフォームは2019年4月から始めた。外壁に付けられていた化粧板を外し、板を張り替え、落成当時の淡い青緑色に塗った。内装は現代的でおしゃれだが、薬局時代からの木材やほかの建物の古材も使い「新しい物と古い物の融合」になっている。「あおみどりの木」という名前はすみれさんの息子が付けた。

 ギャラリーにしたのは家族が多趣味で、アーティストや作家の知人も多いからだ。すみれさんと朝雄さんは「ここから文化を発信したい」と展望を描く。

 こけら落とし企画として、18日から10月17日まで写真家・藤代冥砂さん(53)が那覇市内の古い家々を撮影した写真展「OLDEW HOUSES NAHA CITY」を開催している。すみれさんは「再開発が進む中、写真を通して街並みを記憶に残してもらえたら」と話す。入場料500円、高校生以下無料。営業時間は午前10時~午後5時。日、月曜日は定休。問い合わせは「あおみどりの木」(電話)098(863)3730。 (伊佐尚記)

「あおみどりの木」を背にする(左から)神谷薬局2代目の神谷朝雄さん、店長の當銘すみれさん、副店長の當銘寿夫さん、写真家の藤代冥砂さん=19日、那覇市松尾
リフォームのきっかけになった神谷薬局落成当時の写真=1952年(あおみどりの木提供)
ギャラリーとして生まれ変わった「あおみどりの木」の内部=19日、那覇市松尾