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海外経験を糧に外国ルーツの子に寄り添う 沖縄・比屋根小に日本語・国際教室


この記事を書いた人 Avatar photo 熊谷 樹
カードを使って児童に果物の名前を当てさせる阿部愛美教諭=15日、沖縄市比屋根の比屋根小学校

 沖縄市立比屋根小学校は2020年度、日本語・国際教室「Can Be(キャンビー)」を新設した。日本語を母語としない児童に日本語指導を行うと同時に、彼らのアイデンティティー教育に力を入れている。担当する阿部愛美教諭は、中学校入学まで海外を転々とし、外国人として現地の学校で過ごした経験がある。「一人一人アイデンティティーは違う。自分らしい自分であっていい」とその経験を糧に、児童らに寄り添っている。

 現在キャンビーには12人が在籍しその他に10人の児童が関わっている。日本語能力は個々で異なるため、本人の希望と保護者の教育方針を踏まえ、児童一人一人に合った指導を心掛ける。

 「警察署」「銀行?」。絵を見て答える2年のリワグ・エライジャ・スカイ・ラサマナ君(8)は、3歳で家族とフィリピンから来沖した。4月から本格的に日本語を学んでいる。日本の学校生活で必要な日本語やルールの理解が学習の中心だ。

 次に教室を訪れた4年生は作文が苦手だという。「そして」「しかし」など接続詞の使い方について文章を作りながら学んだ。授業後半は「英語も話せるようになりたい」という本人の希望を踏まえ、英単語も練習した。進学などを見据えた日本語学習だけでなく、アイデンティティーの土台となる英語や母語に触れる時間も大切にしている。

 阿部教諭は父の仕事の都合で3歳から中学校入学まで香港、ドイツ、サウジアラビア、アメリカで暮らした。言葉を理解できない中、教室ではつらい時間も多かった。「黒人って指をさされて言われた」「何を言っているか分からないけど、ばかにされているのは分かる」「自分は何人なんだろう」―。児童たちが訴える言葉に、過去の自分が重なる。

 「僕は30%はフィリピン人、70%は日本人」「英語で話してって言われるのは嫌です」―。在籍児童が自身を紹介する壁新聞には、自分自身に対する見方や周りにどう接してほしいかの思いが盛り込まれている。

 阿部教諭は「キャンビーには外国籍の子、ハーフの子、ハンディのある子、誰がいてもいい。日本語を学び、自分自身について考え、公立の学校で強く生きていく手助けがしたい」と前を見据えた。
 (熊谷樹)