【記者解説】ANA、成田にパイロット集約 那覇国際ハブ復活はコロナ収束が前提に


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 ANAカーゴが那覇空港を発着する国際貨物便の全便運休を継続するのは、航空業界が新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中で、パイロットと飛行機という限られた資源を成田に集約し、効率的な輸送体制を構築するためだ。

 新型コロナの拡大前まで貨物は貨物専用便だけでなく、旅客便の貨物スペースも使って世界各地に運んでいた。

 しかし現在、ANAの国際旅客便は9割が運休しており、貨物を運べるスペースが減少している。さらに、派遣会社を通じ確保していた外国人パイロットの入国制限も続いており、人的資源が限られている。

 ANAカーゴは那覇空港、北九州空港などの国際貨物路線を全便運休する一方で、10月25日から成田発着の国際線は新規路線を就航したり、既存路線を増便したりする予定だ。現在は「需要に供給が追い付いていない」(渡辺英俊沖縄統括支店長)といい、医薬品や医療機器、半導体など工場稼働に必要な部品といった社会的要請が高いものを優先的に輸送している。

 貨物ハブは出発地と目的地の2地点を直接往復するのではなく、羽田から沖縄を経由し、さらに韓国から香港に行き羽田に戻るといった運航をするため、パイロットの数が必要になる。国際ハブ事業の再開にはコロナが収束し、外国人パイロットが以前のように自由に出入国できることが前提となる。

 さらに沖縄から輸出する貨物が安定的にあることも条件だ。沖縄のハブ事業の収支は2009年の開始以来、赤字が続いている。新型コロナによる打撃でANA本体の経営が悪化している状況で、グループ全体で事業の見直しが迫られることも予想される。

(玉城江梨子)