攻撃性強い在来種 畑に大量のアリ、正体は? 宜野座・新里さん宅 クロトゲアリ 休耕地増え草地に巣増か


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新里勝義さんの畑に生息するアリ。「クロトゲアリ」とみられる

 「畑に大量のアリが発生している。かまれると痛い。全県に広まったら大変だ」―。宜野座村に住む新里勝義さん(77)が琉球新報に情報を寄せた。「強毒があるヒアリではないか」。記者は思案しながら、新里さんの畑へと向かった。

 新里さんの畑は約2300平方メートルで、サトウキビや野菜などを栽培する。9月中旬、記者が新里さんと現場を確認すると、スプリンクラーやサトウキビの茎の中にアリが巣を作っている様子が見られた。アリは数年前から発生しているといい、冬場にはパイナップルの木に大きさ数十センチの巣ができるという。

アリが巣を作っている場所を説明する新里勝義さん=15日、宜野座村

 畑は新里さんが運営する体験学習施設の一部で、修学旅行生らがサトウキビの収穫体験などに取り組んでいた。月に数校を受け入れていたというが、今は新型コロナウイルスの影響で開店休業の状態だ。「コロナが終わって修学旅行が再開しても、今の状態では畑が使えない」。焦りは募るばかりだ。巣をガスバーナーで焼いてみたり、殺虫剤を散布してみたりしたが「繁殖力が強くて追い付かない」と頭を抱える。

 「アガッ(痛い)」。巣のある場所を案内していた新里さんは、何度もアリにかまれ、悲鳴を上げた。新里さんの畑の裏には保育所がある。「子どもたちがかまれては大変だ」と心配は尽きない。

 このアリの種類は―。撮影した写真を専門家に見せて調べた。「クロトゲアリ」という種類で、沖縄在来のアリとみられ、東南アジア地域に広く分布するという。国や県などの指定病害虫ではなく、公的機関での駆除も難しそうだ。宜野座村の担当者は「薬剤などについてアドバイスすることはできるが、個人の土地である以上、駆除は個人の責任でやる必要がある」と話す。

 侵略的外来種で別種の「ハヤトゲフシアリ」が今年7月に県内で初確認されたことが報道されて以降、環境省沖縄奄美自然環境事務所にはクロトゲアリについて問い合わせが寄せられるようになったという。同事務所の担当者は「(ハヤトゲフシアリの報道で)クロトゲアリも大きく目立つアリなので、関心が持たれたのだろう」と推測する。

 沖縄科学技術大学院大学の吉村正志博士は「クロトゲアリは県内で大量発生しているという状況ではない」と説明する。ただ、数十年スパンの出来事として、休耕地などが増えて背の高い草地に巣を作るケースが増えている可能性はあるという。

 人間にかみつくなど攻撃性が強い一方、害虫に対する排除力もあるという。吉村氏は「過剰に取り除くと、別の所に影響が出てくる。(クロトゲアリと)どう付き合っていくかを考えるべきだ」と強調した。

(塚崎昇平)