「全員受け入れ」光と影 沖縄県内の救急診療、全国の倍 コロナ禍、現場は疲弊<新型コロナと沖縄>


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 新型コロナウイルス感染拡大で7月以降の「第2波」では、病院の医師や看護師が感染し、クラスター(感染者集団)が発生するなど医療現場が逼迫(ひっぱく)した。那覇市内では3病院が救急診療を休止し、県が不要な救急受診を控えるよう呼び掛ける事態に。元々、沖縄は休日・夜間・時間外の受診件数が全国平均の約2倍と突出して多い。1カ所でも救急診療が休止すると、他の医療機関に患者が殺到する。今後、第3波の到来も懸念されており、現場で働く医師は、「救急診療の受診件数の適正化を図る時期に来ている」と強調する。

県内の救急診療のあり方について話す救急医の林峰栄医師=16日、那覇市立病院

 これまで沖縄の救急医療は「患者のたらい回しがない」と言われてきた。24時間体制の救急医療は、入院に至らない患者を1次救急、入院や手術を必要とする患者を2次救急、重症で高度専門医療を必要とする患者を3次救急と区分する。県外の救急診療は、3次救急の重症患者に絞って診療する「集中治療型」が主流となってきた。一方、沖縄は多くの医療機関で北米型救急医療モデルの「ER(エマージェンシールーム=救急室)方式」が採用され、軽症の1次から重症の3次まで区別せず、全ての救急患者を受け入れる。初期診療を施し、症状によってトリアージ(選別)し診療する。

 県立中部病院感染症内科の高山義浩医師によると、2017年度の休日・夜間における人口1000人当たりの年間の受診件数は、全国平均133件に対し沖縄は244件と突出している。県内の複数の救急病院で勤務する救急医の林峰栄医師はこの現状を「光と影の側面がある」と指摘する。

 「ER方式」は時間外でも気軽に診療を受けやすいメリットがあるが、新型コロナ感染拡大を受け、負の側面も浮き彫りになった。元々、救急病院の多い沖縄では、夜中でも救急外来を受診する患者が多かった。夜間は日中と比べて医師の数も少なく、現場医師の負担増につながっている。そこにコロナが流行し、さらなる現場の疲弊につながった。コロナ禍で複数の医療機関が救急診療を休止した際には、救急搬送が通常の2倍になった病院もある。医療現場の疲弊は医療の質の低下を招き、悪循環が起きている。林医師は、県内の救急診療の実態を振り返り「医療の質を守るためにも、救急診療は『時間外診療』ではないことを正しく認識してほしい」と語った。

(阪口彩子)