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引退覚悟、決意の挑戦 元五輪ロード選手・内間 康平 競輪へ、自ら追い込む<ブレークスルー>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
競輪への挑戦について語る内間康平

 4年前のリオデジャネイロ五輪に出場し、自転車ロードレースの第一線で戦ってきた内間康平(北中城高―鹿屋体育大出)。新型コロナウイルスの影響で大会が軒並み中止になる中、今夏限りでロードを退き、競輪への挑戦を表明した。10月に始まる日本競輪選手養成所の入所試験に向けて猛練習を積む。31歳。受験者の中では高齢であることを念頭に「今回落ちたら引退」と競技人生を懸ける覚悟で挑む。

バイクに乗った練習仲間に腰を押してもらいスピード強化を図る内間康平 =19日、沖縄市の県総合運動公園自転車競技場(新里圭蔵撮影)

■力ぶつける場所

 転向を考え始めたのは5月ごろ。今季初戦だった3月のフィリピン、4月のタイでのレースがいずれも中止になった。欧州を中心に大会は再開してきているが、主戦場とする国内やアジアは飛行機での移動も多く、今も国際大会の本格的な再開に向けては道筋が立っていない。「選手は活躍の場があってこそ。モチベーションの維持が難しくなった」

 そんな時、高校の先輩である競輪選手の屋良朝春(北中城高―日大出)らから「競輪に来ないか?」と誘いを受けた。ロードは34~35歳で引退する選手が多いと言い「今年でもう32歳になる。力をぶつける場所がほしい」と6月下旬に新たな挑戦を決心。トラックで鍛錬を始めた。8月の宇都宮ロードレースがロード最後の大会となったが「自転車選手としては終わらない。沖縄に早く帰って練習しないと」と気持ちは切れなかったという。同月下旬、チーム右京を通してロード引退を発表した。

■瞬発力の鍛錬

 「マラソン選手が陸上短距離に転向するほどの違いがある」というほど、ロードと競輪は異質な競技だ。トラック競技をするのは高校以来となる。短距離のスピードで争う競輪はより瞬発力が必要なため、今はバイクに乗った練習仲間に腰を押してもらうなどして、高速で足を回す感覚を体に覚えさせている。練習を通し爆発力を生む「速筋」を鍛える。

 使う自転車もロードバイクと違い、ブレーキや変速機は付いていない。鉄などが主な素材となっており「ロードバイクと違ってペダルを踏んでも返ってこないので、重たい。回し方が全然違う」という。最初は感覚の違いでタイムの短縮に苦慮していたが、自分に合ったフレームを模索するなどして徐々に記録を伸ばしている。

 日本競輪選手養成所の男子一般試験は合格者が約70人で、合格率は20%ほど。技能試験にはハロン(約200メートル)のタイム測定などがある。ハロンでは11秒台前半が必要というが、内間のベストはまだ12秒台。「今までやってきたことと全然違う。今は競技人生でどん底だけど、先輩もなんとか自分を合格させようと支えてくれているので、頑張りたい」ともがき続ける。

 2、3日に1日のペースで休みを入れながら、ひたすら追い込み「帰ったら動けなくなるくらいキツい」と苦笑するが「これ(試験)がダメならもう年齢的に引退。残り時間は少ないけど、レースに出られなかった悔しさをぶつけたい」と気合を入れた。 (長嶺真輝)