ボクシング全日本新人王に迫る県勢 福永「野性的本能で攻める」 狩俣「プロで生きる覚悟」


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 新人プロボクサーの日本一を決める「全日本新人王決定戦」への出場を懸け、県勢プロボクサーが躍動している。現在行われている、各地区予選で西部日本新人王戦フェザー級の福永輝(沖縄ワールドリング)が決勝に、東日本新人王戦のライトフライ級は、宮古島出身の狩俣綾汰(三迫)が準決勝進出を決め、各地区代表の座をつかむまであと一歩というところまで迫る。2人の共通点は憧れの選手に元世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者の比嘉大吾を挙げるところ。尊敬する選手の背中に追いつけ、追い越せと熱いパンチに磨きをかける。

豪快な“沖縄の倒し屋” フェザー級・福永輝(浦添商高出身)
 

福永 輝

 2018年、WBCフライ級王者の比嘉の2度目の防衛戦の前座で華々しくデビューした福永輝(21)(浦添商高出―沖縄ワールドリング)のこれまでの戦績は6戦5勝(4KO)1敗。デビューから4戦連続でKO勝ちと、威力ある重いパンチと磨き抜かれたセンスで勝利を重ねてきた。豪快にKO重ねる姿から“沖縄の倒し屋”と呼ばれ、全日本新人王戦への出場が期待される一人だ。

 17年に比嘉がWBCフライ級王者となった試合をテレビで見て一念発起し、競技を始めた。比嘉のように前に出て攻める強気のスタイルを貫く。所属する沖縄ワールドリングの中真光石会長は「相手を豪快に倒し、KOを取るので観客を魅了する」と評価する。闘争心も誰にも負けない自負があるという。中真会長は「今時のボクサーには珍しく闘争心がありすぎる。沖縄が“ボクシング王国”と言われた時代の熱い闘志を感じさせる」と王国沖縄の復活の一躍も担う人材と期待を寄せている。

 6日に行われた西部日本新人王戦準決勝は、3―0で判定勝ちしたものの終了後、戦い方に納得がいかないと、人目もはばからず涙した。「KOを狙いすぎるあまり自分のペースが乱れ、ここというところで決めきれず悔しさが残った」。クリンチでペースを乱され、大振りになってしまったと、決勝に向け課題を挙げる。昨年は、西軍代表決定戦で敗れ、全日本新人王戦まであと一歩だった。今年こそ後楽園ホールでの全日本でKO勝ちを収めると誓う。

 10月11日の西部地区の決勝に向け「野性的本能でアグレッシブに攻める自分のボクシングをするだけ。それができれば結果はついてくる」と前を見据え、ミットに自慢の拳を打ち付ける。


不屈の「あららがま魂」 ライトフライ級・狩俣綾汰(宮古総実高出身)

 

東日本新人王予選準々決勝 積極的な攻撃でKO勝ちしたライトフライ級の狩俣綾汰=6日、東京都の後楽園ホール(本人提供)

 昨年6月のプロデビューから4戦全勝(2KO)の快進撃を続けるのはライトフライ級の狩俣綾汰(25)(宮古総実―芦屋大出―三迫)。トランクスに入った「あららがま魂」の言葉通りの不屈のファイタースタイルで、相手をリング際に追いやる。観客に「えげつない」と言わしめる左ボディーを武器に、新人王を狙う。

 高校でボクシングを始めたが大学卒業後は、減量や練習に嫌気が差し、地元で大手ホテルに就職して競技から離れた。だが、高校時代ともに練習してきた同級生の比嘉大吾(Ambition)や川満俊輝(三迫)らの活躍を見て「後悔したくない」と再起し、プロ入りを決意。仕事を10カ月で退職し、当初反対していた両親に頭を下げた。「ボクシングに対して中途半端な気持ちがあったが、プロ一本で行く覚悟が固まった」。親の許しを得て、高校時代の恩師で元日本ランカーの知念健次氏の紹介で三迫に入門した。

 6日に東京・後楽園ホールで行われた東日本新人王戦準々決勝。序盤から間合いを詰めて接近戦に持ち込んだ。ボディー狙いからフック、アッパーなども効果的で間髪入れずに攻め込む。ロープを背負わせると「ここで決める」。ストレートがクリーンヒット。さらに左ボディーの連打でKO勝ちを決めた。1回2分50秒だった。あっという間のKOだったが「まだまだ改善点はある」と静かに勝利をかみしめる。

 果敢な攻めの一方で、防御が手薄になり強烈な左フックをもらった。「かわしたが、それでも応えた」とタイトル獲得を見据えて修正を誓う。所属する三迫ジムには6階級10人の王者がおり、狩俣も「早く先輩たちに追いつき、追い越したい」。目指すは全日本新人王タイトルだ。“あららがま魂”を胸に、25歳のファイターが挑む。