那覇軍港の受け入れに質問集中 浦添市長「苦渋の決断」繰り返す 市議会9月一般質問


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浦添市議会9月定例会で一般質問に立つ市議=9月18日、同議会

 【浦添】浦添市議会(護得久朝文議長)9月定例会では一般質問が9月16日から24日まであった。米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設について松本哲治浦添市長が8月に代替施設北側配置案の受け入れを表明して以来初めての議会で、23人中17人がこの件を取り上げた。浦添市消防本部で8月に発生した救急出動遅れについても質問が集中した。また新型コロナウイルスの経済対策として打ち出している事業「ありがとう&がんばろう食事券」について効果を疑問視する声もあった。

「どこの市長か」

 松本市長は2期目の公約を撤回し、北側案を受け入れた理由について「(浦添市が推す)南側案にしてほしいと再三、玉城デニー知事と城間幹子那覇市長に伝えてきたが、直接の協議に応じてもらえなかった」「浦添市にとって軍港の受け入れはデメリットだが、軍港の返還は(跡地利用などで)大きなプラス。苦渋の決断だったが、県全体のために受け入れの合意に至った」と繰り返した。

 西銘健氏(共産)は「市長は那覇のメリットと浦添のデメリットをてんびんにかけて、那覇のメリットを選んだ。『どこの市長か』と問いたい。市民の立場に立つのであれば、軍港は要らないと明確に言うべきだ」と批判した。松本市長は「国も那覇市も沖縄県も足並みそろえて軍港移設を容認している。浦添市だけデメリットがあるからと言って固辞できない」と反論した。

 市民に向けた説明会の開催について松本市長は「なるべく早いうちに多くの市民に説明し、ご理解をいただきたい」と前向きな姿勢を見せた。當間清春氏(仁の会)への答弁。

コロナ対策に批判

 浦添市内の飲食店や理髪店などで使える「ありがとう&がんばろう食事券」は、市が医療従事者や介護事業所職員らに配布したほか、1冊1万円分を1万円で販売している。しかし市民への特典(プレミアム)がない。市によると販売用に3千冊印刷したが、売り上げは9月29日までに689冊にとどまる。

 稲嶺伸作氏(公明)らへの答弁で比嘉克也経済観光局長は「プレミアムが付いていないことが一番の理由。一方でスピード感を持って市内の飲食店を支援したことは一定の効果があった」と説明した。

 また市内の中学3年生対象の食事券の配布について、市教育委員会の金城淳指導部長は「コロナの影響で臨時休校となり、学習に遅れが生じた。特に高校受験を控えた中3を激励するため」と説明した。伊礼悠記氏(共産)は「学習に遅れが出たなら(食事券配布ではなく)学習支援を行うのが本来の筋だ」と指摘した。

 浦添消防が119番通報を受けた際、職員が新型コロナウイルス感染を疑った結果、救急出動が遅れ、その後に女性の死亡が確認された件については6人が質問した。

 嘉味田朝消防長は外部の有識者を交えた常設の「コンプライアンス推進委員会」を立ち上げて原因を検証し、再発防止策を議論する方針を示した。

 (荒井良平)