【記者解説】「頭越し」予算は3倍…沖縄県に冷たい概算要求


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 現行の沖縄振興特別措置法の下で最後となる2021年度沖縄関係予算概算要求は、20年度概算要求から84億円の減少となった。内閣府は、事項要求で求めた全国措置としての防災・減災関連の継続分を勘案すれば「実質的には(3190億円を求めた)前年と同水準」だとするが、これまで3年連続で同額を求めていた流れの中での減額は、新政権の沖縄に対する姿勢の“冷たさ”を印象付けた。

 政府は減額要因として防災・減災、国土強靱(きょうじん)化3カ年緊急対策が本年度末で終了することを挙げるが、予算の内訳を見ると、沖縄への厳しい措置が垣間見える。

 概算要求額を前年度と比べると、沖縄振興一括交付金は103億円減った。公共事業関係費等の84億円減を上回る減少額となっており、要求額全体を引き下げた主要因は一括交付金にあることが見て取れる。

 一方、一括交付金を補完する「沖縄振興特定事業推進費」は30億円増の85億円を要望した。推進費は県を通さず国が市町村などに直接交付するのが特徴だ。19年度予算で創設された初年度の30億円から2.8倍に伸びている。

 一括交付金も推進費も、自治体から見た使い勝手は変わらないにもかかわらず、一括交付金は減り続け、推進費が増える側面に、「国主導」で地域振興を進めたい菅政権の思惑が透ける。

 政府は、沖縄振興特別措置法の継続の是非について、これまでの取り組みを検証中だ。一括交付金などの継続も「未定」としているが、こうした「国主導」で振興を図る姿勢はポスト沖振法にも影を落とす。
 (知念征尚)