沖縄の「あちこーこー島豆腐」存亡の危機に… 食文化守る! 業界は模索


社会
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手早く袋に詰められるあちこーこー島豆腐=9月29日、那覇市安謝のひろし屋食品

 10月2日は語呂合わせで「豆腐の日」。チャンプルーにしたり、みそ汁の具にしたり、沖縄の食卓に欠かせないのが島豆腐だ。価格の安さや消費期限の長さから冷蔵された「パック豆腐」が主流となっているが、「あちこーこー島豆腐」の味はやはり格別。そのあちこーこー島豆腐が存亡の危機にひんしている。沖縄の食文化を守るにはどうすればいいのか。県内豆腐業界は正念場を迎えている。

 「スーパーであちこーこー島豆腐を売り続けるための基準。これを守るにはどうすればいいのか知恵を出し合いたい」。9月27日、県内の豆腐製造業者に県食品衛生協会の伊志嶺哉専務理事が呼び掛けた。

 食品衛生法の改正に伴い、国際的な食品の安全管理基準「HACCP(ハサップ)」の考え方に基づいた衛生管理が全ての食品事業者に義務づけられ、2021年までに導入しなければならない。島豆腐製造現場の調査結果などから、島豆腐の食中毒要因となるセレウス菌は55度以下で増殖を開始し、約3時間で健康被害が生じるレベルに達することが判明した。そのため、あちこーこー島豆腐は55度を切ってから3時間以内に販売するという基準が決められた。これに従うと、スーパーでは納品時に55度以上あることを確認し、それから3時間以内は販売できる―ということになる。

 「55度以上で出荷できるのか、温かいままどう運ぶのか、2段階の課題がある」。ひろし屋食品(那覇市)の糸数力也社長は指摘する。出荷前の袋詰め作業中にも温度は下がっていく。スーパーまでの配達の間も温度は低下する。納品時に55度以上でなければいけないため、逆算して出荷時の温度や配送ルートを考えなければいけない。

 55度以上で納品できたとしても、販売時間は今よりも短い3時間。廃棄を出さないように、納品数や納品時間も見直さなければいけない。検討事項は多いが、糸数社長は「あちこーこーを守るためにやるしかない」と気を引き締める。

 県内のスーパーは「対応はまだ決まっていない」としつつも、「3時間で売り切るのは難しい」「55度は熱いので、店頭に並べるとやけどの恐れもある。クリアすべきことは多い」と課題を挙げる。

 店頭で3時間しか並ばないあちこーこー島豆腐は「究極の生鮮食品」とも言える。伊志嶺専務理事は「買ったらすぐに食べる。それができないときは、(豆腐が漬かっている)吾汁(ごじる)を捨ててすぐに冷蔵庫に入れる」という管理方法を消費者へ周知する必要性も指摘する。

 県豆腐油揚商工組合の久高将勝理事長は「沖縄の大事な食文化を残すための基準。業界一体となって消費者に安心安全な豆腐を提供したい」と話している。 

(玉城江梨子)