<玉城県政2年>子どもの貧困対策で連携強化 識者「虐待救済で抜け落ちも」


この記事を書いた人 Avatar photo 嶋野 雅明

 翁長雄志前知事が推進した子どもの貧困対策は、玉城県政も「最重要施策」に位置付けている。就学援助制度の充実、子どもの居場所や貧困対策支援員の活動強化など、国、市町村と連携した施策を実行してきた。

 子どもの虐待死事件が相次いだことなどを受け、子どもを虐待から守る「県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」を制定し、4月から施行した。児童相談所に「初期対応班」を設置するなど組織強化にも取り組んだ。

 翁長県政で子どもの貧困対策の指揮を執った金城弘昌氏を教育長に起用。公約だった中高生の通学費無償化に向け、まずは生活困窮世帯の高校生のバス・モノレール無償化を実現した。
 

山野良一氏(沖縄大教授)

 ■「コロナ禍で課題は増えた」山野良一氏(沖縄大教授)

 翁長県政が土台を築いた子どもの貧困対策を継続し、高校生のバス・モノレール通学無償化を始めた。一歩進めている。

 スクール・ソーシャル・ワーカーの配置は子どもの貧困対策で重要な施策の一つだが、市町村で差がある。全県下で配置できるように音頭を取ってほしい。保育の待機児童率は相変わらず全国一高いので、早くゼロにする施策が求められている。

 児童相談所の組織強化は人員確保だけでなく、専門的な力量を持った職員の配置が必要だ。福祉専門職はわずかしか採用しておらず、児相への希望者も少ない。「児童福祉専門職」として募集し、人材を集めている都道府県もある。

 虐待防止を主とする「県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」を制定したが、中途半端になってしまった。子どもの権利の保障を強く打ち出すべきだが、権利の「尊重」にとどまり、他府県にある「子どもホットライン」のような救済システムは抜け落ちている。今後の見直しに期待したい。

 子どもの虐待防止、貧困対策は、子どもの権利保障を軸としたトライアングルで成り立つ。子どもの権利保障は一丁目一番地だ。

 コロナ禍で深刻な影響を受けた子どもは多く、課題は増えた。残りの任期はこの子どもたちをどう救うのかが政策課題になる。
 (児童福祉)