<玉城県政2年>アジア経済戦略にコロナ痛撃 識者「本質外れた返還地利用」


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 玉城デニー知事の経済振興の公約は、前任の翁長雄志知事の政策を基本的に踏襲している。知事公約の柱「県アジア経済戦略構想推進計画」の主な施策展開で、アジアを中心とした観光客や物流の取り込みを期待したが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてブレーキが掛かる。

 待望の那覇空港第2滑走路は3月に供用開始した。だが、4月に入り新型コロナの感染拡大で航空便は相次いで運休した。多い時は15路線あった国際線は全便運休となり、全日空が展開している国際物流ハブ事業も来年3月まで運休する。

 公約の入域観光客1200万人を目指すが、オーバーツーリズムの弊害やコロナ禍も相まって「量から質」への観光政策に転換する方針だ。

 大型MICE施設の整備はまだめどが立っておらず、民間資本も含める方向に転換した。先端バイオ施設の核として豊見城市与根に整備予定だった細胞培養加工施設の計画は、市議会の反対で当面難しくなっている。
 

来間泰男氏

 ■「農水、製造業に支援を」来間泰男氏(沖国大名誉教授)

 玉城デニー知事が主導した経済政策といってもあまり思い当たるものがない。経済振興については翁長雄志前県政から引き続き就いている経済学者の富川盛武副知事が担っている。役割分担はそれでいい。

 玉城県政でも以前の県政でもそうだが、基地が返還されたら跡地利用で産業が発展するとして、小禄金城地区や北谷町美浜地区などを挙げている。確かに街並みが変わり、雇用も増えた。だが沖縄経済が抱える本当の問題を見ないで、表面的な華やかさのみを宣伝していないか。

 返還跡地は軒並み大型店舗が建つ商業地や住宅地となり、持続的な継続発展に資するものづくりにあまり生かされていない。検証が必要だ。

 入域観光客は1千万人を突破した。ただ沖縄は国内屈指の観光地で、観光産業は県政が積極的に施策展開せずとも発展する。

 外国人観光客が増えたのは、主に中国、韓国で旅行需要が高まったからだ。行政が支援しないとますます厳しくなる農林水産業や製造業への支援はおざなりになっていないか。

 新型コロナウイルスで県経済は大打撃を受けた。ただ沖縄のみならず日本全体がそうであり、玉城知事も打てる手は少なかった。

 感染症の拡大防止を最優先にせざるを得ず、社会経済活動に一定のダメージがあるのは、ある面では仕方がなかった。 (沖縄経済論)