海上交通で町発展へ 本部―那覇 高速船就航 周遊バスと連結 「素通り」から脱却目指す


社会
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那覇―本部をつなぐ高速船「ジンベエ・マリン」=3日午前9時ごろ、本部町の渡久地港

 新型コロナ禍で打撃を受ける県内観光産業。本部町も例外ではない。「自粛だけじゃ経済は成り立たない。新たな海上交通が本部のさらなる発展につながる」(石川博己同町議会議長)―。現状を打破しようと那覇市の那覇港泊ふ頭と本部町の渡久地港をつなぐ高速船が6月20日に就航し、1日3往復する。町内を周遊する無料バスを運行させるなど策を講じる。

町議ら試乗、活用向け議論

 那覇―本部をつなぐ船の運航は過去にもあり、町関係者は「3度目の正直だ」と意気込む。1975年の沖縄国際海洋博覧会に合わせて就航したホバークラフト、97年には県が出資した高速旅客船「マーリン」は、利用客数が伸び悩んだ。天候に左右され欠航が多く、荷物の重量制限、船賃が高額などが要因だった。

 今回は民間の第一マリンサービス(熊坂俊彦社長)が高速船「ジンベエ・マリン(タクマ3)」を運航する。全長は30・7メートル、幅7・8メートルで、船体には大きなジンベエザメの絵がプリントされている。横揺れの少ない「双胴船」、重量は131トンあり天候に大きく左右されない。6月の就航から台風9号が接近した8月末まで、欠航はゼロを誇った。75分間の航海では、瀬底大橋をくぐり残波岬の壮大な景観を眺めることができる。条件が良ければイルカの群れが優雅に泳ぐ姿が見られるという。

 3日、本部町議会と本部町商工会の約30人が参加する試乗会があり、引き続き那覇市内で意見交換会が開かれた。町委託の無料シャトルバスは渡久地港と本部町内の各ホテル、もとぶかりゆし市場などを回る。これまで海洋博公園目当てで町を「素通り」する観光客が多かったといい、さらなる「滞在型観光地」実現のため、多くの意見が飛び交った。

 松田泰昭商工会長は「キャッシュレス推進化など、まだ受け入れ体制に課題はあるが、まずは本部の魅力を伝えたい」と力を込める。熊坂社長は「北部観光振興のためにも、まずは船を知ってもらわないとどうしようもない」と話す。運賃は大人片道通常3千円のところ、県民割を利用すると2千円となる。今後は学割や1年間乗り放題チケットも実現させる。観光客でにぎわう町を取り戻すべく、高速船に期待を寄せる。 (喜屋武研伍)