PCR検査技師「人材確保が喫緊の課題」 体制強化に向け実地研修 第3波やインフル備え


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ピペットを使って検体の処理作業を行う研修参加者=9月27日、うるま市のAVSS沖縄研究所

 【中部】県内で新型コロナウイルス感染症の収束のめどが立たない中、PCR検査の長期的な実施体制や検査技師の人材確保が求められている。県臨床検査技師会は、検査体制の強化に向けた人材育成に力を入れる。9月27日には臨床検査技師を対象にPCR検査の実地研修をうるま市のAVSS(エービス)沖縄研究所で開いた。特別に許可を得て記者も参加し、PCR検査の現場を取材した。

 PCR検査はウイルスや細菌などを特定する手法で、結核や重症急性呼吸器症候群(SARS)の判定にも用いられる。検体に含まれるわずかなウイルスを増やし、試薬と混ぜ合わせるなどの行程を経て、陰性か陽性かを判断する。

 実地研修には、県内の病院に勤める臨床検査技師ら11人が参加した。研修では参加者の唾液を採取し、自ら検体を処理した。作業時は、一つの行程を終えるたびに検体を採取するピペットやゴム手袋を取り換えるなど、検体の混合を防ぐために細心の注意が払われた。

 記者は初めて手にする器具の取り扱いに困惑。なんとか作業を終えると、緊張からか、着用していたガウンが汗でにじんでいた。

 バイオベンチャー企業のAVSS沖縄研究所は県の委託などを受け、4月から新型コロナのPCR検査を実施してきた。これまでに延べ約1万4千件の行政検査や保険診療検査の検体を受け入れ、1日当たり約300~500件を処理している。

AVSS沖縄研究室統括研究員の春山貴弘さん(左)から手順などの説明を受ける臨床検査技師ら

 県内でクラスター(感染者集団)の発生が相次いだ7月以降は、通常の検査に加え、基地従業員や那覇市松山の飲食店従業員らを対象にした検査も同時に処理していた。職員6人体制で休みなく働き、人材の確保が急務だった。県臨床検査技師会は研修を受講した技師5人を研究所に派遣し、土日を含めて検査体制を維持している。

 県内の感染者数が2桁で推移する中、AVSS沖縄研究室統括研究員の春山貴弘さんは「人材確保や試薬の補充などが喫緊の課題だ。第3波が来れば、また逼迫(ひっぱく)した状態になるだろう」と話す。

 県臨床検査技師会は、第3波や季節性インフルエンザとの同時流行を想定し、PCR検査の拡充を見据える。県内では今後、中部地区医師会による検体検査センターを含め複数のセンターが開設される予定だ。研修に参加した本島南部の病院に勤める矢野翔士さん(25)は「細かい手順などを学べた。研修を生かして、ミスなく正確に判定できるようにしたい」と気を引き締めた。

 手登根稔会長は「新型コロナの収束まで、逼迫している検査現場に人的な支援を続けていきたい。人材を育成することが使命だと感じている」と語った。
 (下地美夏子)