懲戒解雇はとても厳しい処分だ。不正受給に関する特別検証委員会は一度しか開かれていない。迅速な対応は必要だが、検証や説明が十分にされないまま、処分という結論に至ってしまったことは残念だ。厳しいポーズを取っただけだという印象を与え、市民から理解されない。
一部の人だけに責任を押しつけ、問題をうやむやにした政治家や官僚組織を報道機関は批判してきた。この問題は、処分を受けた社員だけの問題ではない。組織全体の問題として考える必要がある。単に「元」社員の不祥事として終わらせてはいけない。
丁寧な取材を積み重ね、どこに問題があったのか原因を追及する報道機関の基本姿勢に立ち戻って、自社の社員に関わる不祥事にも取り組んでほしい。徹底的に調査をした上で、十分な説明をしなければ市民からの信頼を失う。
(田島泰彦元上智大教授、メディア法)