東村で赤土被害深刻 モズク、潜水漁業に打撃 対策進まず 専門家「潜ると廃虚」


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赤土が付着し、枯れてしまったモズク(提供)

 【東】大雨や台風などによる大規模な赤土流出で、東村内のモズク養殖や潜水漁など漁業に被害が出ている。村内でモズク養殖を行う男性によると、1月に降った大雨などの影響で主に農地などから赤土が海に流出し、出荷を予定していたモズクが全滅した。被害額は約1100万円に上るという。被害は潜水漁業にも及び、男性をはじめ漁業関係者らは数年に渡り、村や県に早急な流出防止対策を求めているが、改善には至ってない。

 男性が営むモズク養殖では、陸上の水槽でモズクを網に種付けし、海中に設置する。赤土が流出して海中のモズクに付着すると、モズクの発育が止まり枯れてしまうという。

 モズクの収穫は通常、4月から6月ごろがピークだ。しかし、その時期に梅雨が重なり赤土が多く流出する。男性は「被害を少しでも減らすため、種付けの時期を早めるなどの工夫を重ねてきた」と説明する。それでも昨年夏は5~6月の大雨で、収穫中や収穫予定だったモズク合計32トンが全滅し、960万円相当の被害となった。

 今年1月には大雨の影響で10センチほど赤土が堆積し、収穫目前のモズクが全滅した。その後の雨ですべて枯れてしまい、9月末までに50トン、約1100万円の被害となった。

 赤土の流出は潜水漁業にも打撃を与えている。赤土が堆積してサンゴが死滅したことで、魚や貝などのえさとなる藻場がなくなり、伊勢エビや魚などが激減したという。漁師の男性によると、今年1月から9月末の間に赤土の影響で海が濁り、漁に出られなかった日数から被害額を試算した結果、村内で活動する漁師全員分で約2772万円となったという。男性は「海の中は生き物がおらず動きがない。死の世界のようだ」と嘆き、頭を抱えた。

 村役場もこれまでに赤土対策を徹底してきた。本年度からは対策に関するチラシやパンフレットを作成し、農家向けに配布を行うなど周知に力を入れている。だが、赤土対策を強化する農家は少ないという。村役場の担当者は「農家によっても対策への意識に個人差がある」と浸透の難しさを実感する。

 村の赤土等流出防止対策地域協議会で農業環境コーディネーターを務める小林大作さんは「一見すると海はきれいだが、潜ると廃虚のようだ。赤土被害の現状をもっと知ってもらいたい。一人一人の小さな意識で、流出改善につながるはずだ」と強調する。

 モズク養殖を行う男性は「もちろん農業も大切だ。しかし、このままだと状況は悪化する一方だ。水産資源を守るためには赤土対策を平行して実施しないといけない」と訴えた。
 (下地陽南乃)