玉城デニー知事は10日、沖縄の基地負担軽減担当相を兼ねる加藤勝信官房長官と県庁で会談した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、玉城知事が計画の断念を求めたのに対し、加藤氏は辺野古移設が「唯一の解決策」とする政府見解を踏襲し、両者の主張は平行線をたどった。玉城知事は、那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添ふ頭地区への移設計画について「那覇軍港は遊休化しているとの話もある。浦添の施設ができてから返還するという時間のかかる計画ではなく、軍港の返還を前倒しして進めてほしい」と述べ、先行返還を要望したことを明らかにした。
玉城知事が那覇軍港の先行返還に言及するのは初めて。面談終了後、玉城知事はこのタイミングでの言及について「官房長官が沖縄を訪れるのはめったにないので、良いチャンスではあったのではないか」と記者団に説明した。加藤氏は「現状についてはしっかりと受け止めておきたい」と述べたという。
普天間飛行場の辺野古移設を巡っては、玉城知事は「県民の理解を得られない辺野古移設計画は断念し、早期に県との協議の場を設けていただくよう強く要望する」と求めた。これに対し加藤氏は「日米同盟の抑止力をどう維持し、また普天間飛行場の危険性をどう除去するか、こうしたことを考えると唯一の解決策は辺野古移設と考えている」と述べた。
面談の冒頭で玉城知事は、新型コロナウイルス対策や2021年度で期限が切れる沖縄振興特別措置法の延長など20項目を盛り込んだ要望書を、加藤氏に手渡した。
加藤氏は9日に、就任後初めて来県した。玉城知事との面談に先立ち、名護市の渡具知武豊市長と辺野古新基地建設現場に近い久辺3区の区長のほか、松川正則宜野湾市長、城間幹子那覇市長、松本哲治浦添市長らと面談した。
自衛隊ヘリで辺野古埋め立て工事現場など本島内を上空から視察した後、普天間飛行場や那覇軍港、浦添ふ頭地区にも直接出向いて視察した。