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沖縄の女性よ大志を抱いて羽ばたいて エンパワーメント企画に込めた思いとは

沖縄ガールズエンパワーメントプログラム「IAm」のネットワーキングカフェ参加者たち=9月26日、那覇市久茂地の沖縄タイムスビル

 10月11日は国連が定めた「国際ガールズ・デー」。若い女性と女の子の権利向上やエンパワーメント(※)の促進を国際社会に呼び掛ける日。県内では、沖縄女性の生きにくさを解消したいと、2人の女性がエンパワーメントの活動に一歩踏み出した。その名も沖縄ガールズエンパワーメントプログラム「IAm(アイアム)」。県内志向や本土との経済格差、「長男信仰」に見られる男性優位社会―。沖縄女性特有の生きにくさに着目したエンパワーメントとは。主催者の思いを知りたくて会いに行った。

※エンパワーメントとは、女性が人生における選択肢を自分の意思で選びとる力や男性と対等に家庭や社会で意思決定に参画する力をつけることを意味している。(参照:国際NGOプラン・インターナショナルウェブサイト)

 

◇多様な生き方を提示

 9月26日土曜の夕方。那覇市久茂地で「IAm」主催のネットワーキングカフェが開かれた。就職を目指す学生がちょっと年上の先輩の体験を聞きながら、「自分らしい仕事」や「働くとは何か」を考える企画だ。

 「IAm」は、沖縄の女性に多様な生き方を提示し自分らしいキャリアアップにつなげてもらおうというプログラム。就職活動に必要なスキルを身につけたり、さまざまな職種で働く先輩たちとつながり交流したりすることで、固定観念にとらわれない多様なキャリアの選択肢を提示することがねらいという。プログラムによって、本来持つ力を発揮できるよう応援(=エンパワーメント)しようというものだ。

 この日の講師は、コワーキングスペース運営会社マネジャーの稲嶺真理菜さんと、琉球朝日放送記者の比嘉夏希さんが務めた。おしゃれなスペースでコーヒーを飲みながら、というリラックスした雰囲気。大学生や専門学校生、社会人約10人が参加していた。

 


「自分らしく働く」をテーマに開催された「IAm」のネットワーキングカフェ=9月26日、那覇市久茂地の沖縄タイムスビル

 

 

◇沖縄を飛び出した2人

 稲嶺さんは、高校受験に失敗して「志望校を見返す!」と決意し最初の留学を経験。その後、沖縄県内の大学に進んだもののなじめずに退学。再度渡米して大学生活を送った。帰国して英語を使う仕事がしたいと航空会社の客室乗務員を目指そうと採用試験を受けた。そこで違和感を抱いた。身だしなみを整えて美しく見せる就職活動は「合っていると思ったけどどこかモヤッとした。合うと思い込んでいた」という。


稲嶺真理菜さん(提供)

 接客は得意だが、自分の好きな時間に「自分らしく働きたい」と現職を選んだ。コワーキングスペースには多様な職種の人が集い、刺激を得られる場所だ。学生たちへ就活のアドバイスとして「違和感はそのままにしないで。自分らしいかどうか。何かやってみるのが大事」と語った。


比嘉夏希さん

 比嘉さんは大学で国際理解教育を学んだ後、フリーアナウンサーとして働いた。その後海外で働いてみたいと、ベトナムに渡り日系企業のイベントディレクターを経験した。帰国後に沖縄で報道記者として多忙な日々を送る。

 男社会の報道現場では、女性であるがゆえに取材先から「偉い人は休みなの?」と言われ、言い返せなかったことも。自分らしく取材することを模索する中で「視野を広げることに可能性を感じる」と女性のエンパワーメントになると信じている。

 これから社会人になる学生たちに「若い頃に関心をもって取り組んだことはいずれ自分の身に返ってくる。今やりたいという気持ちを大事にしてほしい」とアドバイスした。

 

◇「自分らしく」を忘れずに

 講師の2人の共通点は、大学を卒業してすぐに一般企業に就職するという進路を選択しなかったことだ。海外での留学や就職、複数の仕事を経験していても常に「自分らしく働く」という気持ちを忘れていない。

 2人の話を聞いた学生たちはどう思っただろうか。終了後に参加者の声を聞いた。

 沖縄国際大学4年生の平良奈津子さん(23)は来春に東京の不動産関係の企業に就職が決まっている。アパレル関係の仕事にも関心があり、上京までのあと半年で服飾のカラーコーディネートも学ぼうと意欲的だ。稲嶺さんと比嘉さんの話を聞いて「内定先にずっと勤めるかどうかはまだ分からないけど、今日の話を聞いて可能性が広がった」と声を弾ませた。

 沖縄ビジネス外語学院1年の比嘉佑菜さん(18)は、グランドスタッフの仕事に関心があるという。「型にはまった世間体の良い仕事よりも自分がやりたいと思うことを大事にしたい。その時一生懸命やっていたら自ずと道は開けていくのかな。好きなことをしている人はキラキラしていると思う。いいお手本になりました」と笑顔を見せた。

 


              「IAm」のロゴデザイン

◇沖縄女性の生きにくさとは

 プログラムを立ち上げたのは、元テレビディレクターで琉球大学非常勤講師や客員研究員を務める阿部藹(あい)さんと、沖縄県基地対策課の通訳などの経験があるフリーランス翻訳者の真栄田若菜さん。2人は「沖縄国際人権法研究会」を発起人に名を連ねたメンバーだ。

 この研究会は、基地問題や女性の権利など沖縄で起こっているさまざまな問題を国際人権法の視点で捉え、国際社会に訴えようと立ち上がった組織だ。2人とも自らキャリアを切り開いてきた先輩でもある。

 2人が「IAm」の活動を始めたのは、沖縄女性の生きにくさを少しでも解消したいと思ったからだ。活動をする中で阿部さんと真栄田さんはこう考えるようになった。

 沖縄には、本土との経済格差による低所得や非正規雇用、「長男信仰」に見られるジェンダーバイアスがある。沖縄県内志向で他の都道府県への心理的・物理的なハードルもある。多様な教育機会が欠けて低学歴となり、知識や意欲が失われることで就職の選択肢が狭まり、沖縄女性の自信のなさ、低い自己肯定感につながっているのではないか-。

 


阿部藹さん(提供)

 阿部さんが印象に残っている出来事がある。講義で出会った学生が「自分は頭が悪い」と話すのを聞いた。しっかりした学生との印象をもっていたが、自己肯定感の低さに驚いた。「県内でも学べることはたくさんあるが、学びたいものに出会えていないのでは。可能性が狭められているのではないか」と考えた。

 


真栄田若菜さん

 真栄田さんは、フリーランスの働き方を知って自身の仕事の幅を広げた。教員や公務員が人気の職業となっている沖縄で、社会人になるまで他の職業を知る機会が少ないと感じている。「社会人になってから、学生のうちにもっと知っておけば良かったと思うことが必ずある。そうなる前に有益な情報を届けたい」と今後の展開に構想を膨らませている。

 

 負の連鎖を断ち切るために沖縄の女性の背中を押したい。家族や親は反対するかもしれないけど、「私は私」と言える知識や経験を蓄え、自分の道を進んでほしい。そんな願いを込めてプログラム名には「IAm(私は)」と名付けた。課題は大きいけれど、イベントの雰囲気は、明るく前向きな演出を意識している。

 

◇まだ見ぬ学生たちへ 

 「IAm」の対象は、学外の活動や多様な生き方に触れる機会が少ない県内の女子学生だ。第1弾として7月に開催したのは、専門学校生向けの英語で履歴書を書くワークショップだった。自分を分析し自分の良さを最大限に引き出す言葉を英語で綴った。

 学生たちへの周知のため、大学訪問を開始した。今後は専門学校への訪問も予定している。運営資金のためにクラウドファンディングも始める予定だ。広く若い女性の目に触れてもらいたいとインスタグラムのアカウントで周知する。告知には、学生だけでなく社会人からも反応があったという。今後は社会人向けの教養講座も検討している。

 2人は、まだ出会っていない若い女性たちに向けて、「少年よ、大志を抱け」の言葉を引いた。古くから励まされてきたのは男性だ。だからこそ、今を生きる沖縄の女性に「もっともっと大きな志を抱いて自分らしく羽ばたいて」とメッセージを伝えたいという。

(慶田城七瀬)

 



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