ヘイトスピーチ規制条例、沖縄県が検討 市民団体陳情で議論加速 審議継続も、野党に理解の声


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ヘイトスピーチに対する反対運動のために集まる市民ら=9月、那覇市役所前

 近年、県外の自治体で、ヘイトスピーチ(憎悪表現)を規制する条例制定の動きが進んでいる。2016年1月には大阪市がヘイトスピーチ対策の条例を全国で初めて制定した。19年12月には川崎市が全国で初めて罰則規定を盛り込んだ条例を定めた。一方、沖縄県では県議会文教厚生委員会で議題に上るものの、条例制定には至っていない。

 県内では5年ほど前から那覇市役所前などで、外国人らを対象としたヘイトスピーチが続いており、その様子は動画共有サイトなどでも確認できる。ここ20週間余はヘイトスピーチへの反対運動「カウンター」により、ヘイトスピーチを阻止している。カウンターに参加する市民は「行政が監視するシステムを作ることが必要だ」と条例の必要性を訴える。

 こうした動きの中、県内でも反差別を訴える団体などが県議会にヘイトスピーチを規制する条例制定を求めてきた。だがこの間、議論が大きく進展したとは言い難い状況だった。

 しかし今年に入り風向きは変わりつつある。県議会6月定例会に条例制定を求め陳情を提出した市民団体「沖縄カウンターズ」の高野俊一代表(58)は8月、県議会野党会派の「沖縄・自民」の文教厚生委員と面談し、県内でのヘイトスピーチの実態について議論を交わした。「沖縄・自民」の県議の一人は琉球新報の取材に、あくまで個人的な意見と断った上で「会派内でもヘイトスピーチはまずいという認識は一致していると思う」と語っている。

 開会中の県議会9月定例会には「沖縄カウンターズ」以外からも新たにヘイトスピーチの規制を求める陳情が出た。しかし高野代表らの提出した陳情は、「もう少し突っ込んだ調査や議論が必要」などとの意見が委員から出て、今回も議論の一致を見ず、再び継続審議となった。

 それでも文教厚生委では、県が把握しているヘイトスピーチの事例について問われた県女性力・平和推進課が担当部署として「那覇市役所前などでの事案を把握している」と答弁した。県はこれまで「基準がなく何がヘイトスピーチなのか判断が難しい」とのスタンスだったが、今回初めてヘイトスピーチの実態に対する認識を示した形だ。

 玉城デニー知事は今議会で「ヘイトスピーチ規制条例の検討も行っている」との見解を示している。高野代表は「今議会で県が初めてヘイトスピーチの実態を認めたことは大きな前進だ。今後県は、議会が議論できるよう早期に条例案を作ってほしいし、そのための課題解決に向け取り組んでほしい」と話した。
 (西銘研志郎)