意識改革や研修、相談体制整備を パワハラ防止法の課題 仲松弁護士に聞く


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仲松正人弁護士(本人提供)

 近年、県内のハラスメントに関する相談が増えている背景や、今年6月に施行されたパワハラ防止法について、労働問題に詳しい仲松正人弁護士に話を聞いた。

 ―どんな相談が増えているのか。

 「担当する労働事件の約半数はパワハラやセクハラだ。ここ5、6年は常に多い。不適切なことや人格を否定するようなことを言われたり、限度を超えた叱責や罵倒を受けたり、仕事を与えられないなどの相談が多い」

 「不況で人手不足の中、企業が生き残りを懸け、質的にも量的にも仕事が増えており、ハラスメントが起こりやすい状況にあることや労働者の意識の高まりも起因している」

 ―パワハラ防止法はどんな内容か。

 「パワハラをなくすよう、企業の努力や労働者の協力を求めるもので、防止法だが、禁止法ではない」

 ―同法の課題は。

 「指針は、パワハラに当たる事例と当たらない事例を明文化した一方、定義が限定的なので、許される仕事上の指導と、パワハラに値する行き過ぎた指導の境界は曖昧だ。パワハラ発生時に企業が責任を取る形ではない。損害賠償や社名公表を含め、企業の問題としてパワハラを防止するような動機付けが必要だ」

 ―県職員から寄せられたハラスメントに関する相談に対し、パワハラの認定件数が少ないのはなぜだと考えるか。

 「受け手がセクハラだと感じたらセクハラに当たる。だが、パワハラは事実関係を調査した上で、第三者が見てもパワハラだと思う行為がパワハラに当たるため、認定の範囲が狭まる」

 ―経営者の課題は何か。

 「パワハラがあると、職場環境が悪くなり、労働生産性が落ちる。就業規則でパワハラを禁止すると同時に、意識改革や研修、相談体制を作った後の教育をしっかり実施してほしい。労働組合も会社に対して求めていくことが必要だ」

 ―労働者は何が必要か。

 「いろんなところに気軽に相談してほしい。改善に向けて知恵を付けるのは必要だ」
 (聞き手 比嘉璃子)

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