自衛隊那覇病院を存続へ 防衛省方針転換 陸自の「南西シフト」顕在化


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 【東京】防衛省は2021年度に自衛隊那覇病院(那覇市)の管理主体を航空自衛隊から陸上自衛隊に移管する。同省が09年にまとめた報告書では那覇病院を廃止し九州の病院に集約する方向性が示されたが、その後南西諸島で陸自の新たな部隊配備が相次ぎ、医療拠点を維持する必要があると判断した。中国の海洋進出を想定した防衛力整備の「南西シフト」が、医療面でも顕在化している。

 那覇病院は空自那覇基地内にあり、病床数は50、自衛官である医官数人と看護官20人程度が勤務している。自衛隊員やその家族を利用対象とし、有事には負傷者を収容する「野戦病院」の役割を担う。

 防衛省は09年に設置した検討委員会で、全国16の自衛隊病院を10カ所に集約する方針をまとめた。九州の病院は1カ所とし、福岡県か熊本県の自衛隊病院に機能を集約する考えが掲げられた。

 その後、先島諸島での陸自部隊の配備計画が表面化し、13年末策定の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)には「南西地域の防衛態勢の強化」が盛り込まれた。18年末に改められた現行の防衛大綱は「南西地域における自衛隊の衛生機能の強化を重視する」と明記。那覇病院を存続させ、その指揮を部隊新設が続く陸自に移管する判断に至った。政府の21年度予算概算要求で、防衛省は那覇病院の陸自への移管などの統廃合に関する経費を計上している。