高校野球秋季大会総評 沖尚、九州大会の経験糧に成長 具志川商、機動力で快進撃


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 第70回県高校野球秋季大会は9月20日~10月11日の日程でコザしんきんスタジアムなどで行われた。決勝は沖縄尚学が初優勝を狙う具志川商に8―0で勝利し、2年連続9度目の頂点に立った。2校は来春の全国選抜大会の参考資料となる九州地区大会(31日~5日、長崎県)の代表権を獲得。2015年以来、県勢の選抜出場は遠ざかっており、九州での上位進出に期待が高まる。新型コロナウイルスで思うような練習が積めない中だったが実戦を通じて個々の力を試し、新チームの団結を図るなど指導者、選手にとって貴重な大会となったことだろう。沖尚と具志川商の戦いぶりを中心に大会を振り返る。

2年連続9度目の優勝を果たした沖縄尚学の選手ら=11日、沖縄市のコザしんきんスタジアム(ジャン松元撮影)

■上位2校の力

 沖尚は、昨秋も九州大会に出場した仲宗根皐主将や後間翔瑚ら経験豊富なメンバーがより成長を遂げた印象だ。特に今大会8番を付けてマウンドを任された後間が結果を残した。2、3回戦と準々決勝はいずれも四死球を四つ出し、やや多めだったが、準決勝以降はゼロの丁寧な投球。昨年はリリーフとしての起用が多かったが、今大会全6試合中4試合で先発し、防御率0.843だった。

 外野の守りでは下地泰世の俊足が光り、併殺6で内野の連係もほぼ盤石。チーム打率は3割7分8厘で、中軸の3番・知念大河と4番・仲宗根は打率6割超。課題は残塁の多さだ。九州や全国強豪に勝つには、好機の一打が望まれる。

 初の決勝進出と快進撃を見せた具志川商は盗塁16が際立つ。機動力で相手にプレッシャーをかけた。準決勝の興南戦は、相手投手の立ち上がりの不安定さを狙った畳み掛ける攻めが見事だった。

 ただ、試合によって打線にむらがあることも。犠打の成功率を上げるなど修正を図り、積極的な攻撃を初の九州大会で期待したい。

 絶対的なエースはいないが、4投手で力投した。試合ごとに制球力に磨きがかかった主将の粟國陸斗や新川俊介はさらなる成長が楽しみ。守備は内野を中心に堅く、特に二塁手の島袋大地のフィールディングが光った。失策を減らすのも上位進出の鍵になりそうだ。

■逸材

 今大会の注目株だった興南の左腕・山城京平は、尻上がりに調子を上げた印象だ。最速140キロ中盤の直球を武器に、カーブやスライダーで打者を翻弄(ほんろう)。制球力にやや課題はあったが、冬のトレーニングで下半身などを鍛え上げるはずで、来春には球威がさらに増しそうだ。

 3回戦で興南との延長十一回を投げきった豊見城の垣花琉陽の制球力、初の4強入りを果たした与勝の不動の4番、又吉和輝の広角に打ち分けるバッティング、22年ぶりの8強に手を掛けた球陽の投手、仲村周らの活躍も印象に残った。

 大会で生まれた本塁打は20本で例年より多め。中継プレーのもたつきで、ランニング本塁打を許してしまう場面もあった。コーチャーの指示ミスや犠打失敗の多さなど、新型コロナウイルスの影響で始動が遅れた影響もうかがわせた。

 県内大会は11月の1年生中央大会が残るが、ほとんどの選手が冬のトレーニング期へと入る。秋季の反省を糧に、さらに磨かれたプレーが見られるのが楽しみだ。
 (上江洲真梨子)