【深掘り】県議会、辺野古意見書見送り 与党の調整甘さ露呈 「コロナ対策とリンク」修正ミス


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那覇軍港の早期移設などを求める意見書を賛成多数で可決した9月定例会最終本会議=13日、県議会

 与党3会派は13日、県議会9月定例会最終日当日に辺野古新基地建設断念を求める意見書の提案を断念した。新型コロナウイルスと新基地建設をリンクさせる文言を巡る与野党間の対立と与党の確認不足が主な要因で、与野党勢力が拮抗(きっこう)する中、与党の調整の甘さが露呈した。一方、野党、中立会派からは「非常にお粗末だ」などと批判の声が上がっている。意見書案の取り下げについて、沖縄・平和の照屋大河県議は本会議終了後、記者団に対し「与党として反省すべき点があるということを確認して、各会派で取り下げる意向を確認した」と釈明した。

 そもそも新基地建設に関する意見書案は8日の米軍基地関係特別委員会に提案され審議された。意見書案には「コロナ対策より米軍基地建設を優先する政府の姿勢に、多くの県民が強い憤りを覚えている」などと政府の対応を批判する記述があった。要請項目には「新基地建設を断念し、莫大(ばくだい)な新基地建設予算を新型コロナウイルス感染症対策へと充てること」と明記した。

 文言を巡っては、辺野古新基地建設を容認する野党自民だけではなく、新基地建設に反対する公明党や与党会派のおきなわなどからも「コロナ対策と辺野古をリンクすべきではない」との批判が飛ぶなどして、最終的には意見の一致は見ず、各議員による提案となった。

 その後、与党3会派は文言について協議し、新型コロナに関する文言を削除することを確認し、修正した文書を事務局に提出した。

 しかし、12日午前に開かれた議会運営委員会には「コロナ対策よりも米軍基地建設を優先する政府の姿勢に多くの県民が強い憤りを覚えている」との文言が入ったままの意見書案が提出された。意見書案は審議の末、13日の本会議に提出することが決まった。

 その日の午後8時ごろ、与党が事務局に提出した意見書案と議会運営委員会に提出した意見書案が違うことが発覚。事務局によると、職員のミスだという。

 その後、13日の本会議が始まる直前の与野党協議では、野党などから与党の確認不足を批判する意見が相次ぎ、与党は意見書提案を見送った。一連の経緯について議会運営委員会の与党の委員は「完全に与党のミスだ。調整の上でまとまった意見書案を見ていなかった」などと釈明した。文言調整に関わった与党幹部は「事務局のミスではない、結局は最終チェックを怠った与党のミスだ」と述べた。 (吉田健一)