沖縄の乳がん患者が年々増加 2017年1165人 全国4番目 肥満や飲酒に高リスク


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宮良球一郎医師

 10月は、乳がんの早期検診の促進を訴える「乳がん月間」。現在、日本では9人に1人がかかるとされ、女性がかかる全がんの中で最も多い。沖縄でも乳がんの患者数は年々増加し、2017年は1165人(上皮内がん含む)、人口10万人当たりの年齢調整罹患率は120・9人に上り、全国で4番目に高い。宮良クリニックの宮良球一郎医師(乳腺専門医)は「早期発見、早期治療で命を落とす可能性は低くなっている」とし、検診の重要性を強調する。なぜ沖縄で乳がん患者が増えているのか。県内の傾向、検診で注意することなどをまとめた。(問山栄恵)

 厚生労働省の「全国がん登録罹患(りかん)数・率の報告」によると、全国で2017年に新たに乳がん(上皮内がん含む)と診断された患者数は10万3675人。がんの前段階の上皮内がんを除く乳がんの年齢調整罹患率では沖縄は108・6人で、東京(109・7人)に続き2番目に高くなっている。

女性ホルモンが関係

 乳がんは、乳腺にできる悪性腫瘍。乳房は、母乳を分泌する乳腺組織と脂肪組織から作られている。乳頭を中心に乳腺が放射状に15~20個並び、それぞれの乳腺は小葉に分かれ、小葉は乳管という管でつながっている。乳がんの約90%は乳管から発生するとされる。進行するとリンパ節や骨、肺、肝臓など、乳房以外の臓器にがん細胞が転移する。 乳がんの発生や増殖には、女性ホルモン(エストロゲン)が関係しているとされる。発症リスクを高める主な要因には、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、授乳歴がない、閉経後の肥満、飲酒習慣などがある。

 週にビール大瓶7本に相当する量を超える酒を飲む女性が乳がんになるリスクは、全く飲んだことがない女性の1・75倍との厚生労働省研究班の調査結果発表もある。酒に含まれるエタノールが分解されてできるアセトアルデヒドの発がん性などが関係する可能性が指摘されている。家族に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる人も高リスクとされる。

 県内の乳がん(上皮がん含む)罹患数は、2006年、12年を除き年々増加している。1988年に141人だったのに対して、17年は1165人と約8倍に膨れ上がっている。女性が診断された全がんのうち乳がんが最も多く、全体の約26%を占める。

高齢で全国より多い

 「全国がん登録」に基づく公表データから県がまとめた10万人当たりの罹患率(2016年)でみると、乳がんの発症は、全国では30代前半から急増し、45~49歳で最初のピークを迎えた後に減少し、65~69歳で2回目のピークを迎え、減少していく。

 一方、沖縄では全国とは違う発症の曲線を描く。45~49歳で最初のピークを迎え、60~64歳と75~79歳でそれぞれピークが来る。罹患率は59歳までは全国と差異はないが、60~79歳では全国より高くなっている。

 これに対して宮良医師は「沖縄は欧米型」の特徴があるとし、「食生活の欧米化が進み、沖縄では肥満など生活習慣病によって乳がんのリスクが高くなっている。特に閉経後の肥満に注意が必要だ」と指摘する。

BMI25以上は注意

 乳がんの発生や増殖に関係するエストロゲンは閉経前は卵巣で作られるが、閉経後は、卵巣で作られるエストロゲンが大幅に減少し、その代わり、わずかではあるが体内の脂肪組織でエストロゲンが作られるようになる。副腎から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)が脂肪組織内にある酵素(アロマターゼ)によってエストロゲンに変えるのだ。そのため、BMI(肥満指数)が25を超える肥満の女性の場合、血液中の女性ホルモンが増加することで、乳がんの発症リスクが高まってしまうという。宮良医師は「皮下脂肪が20%増えると、エストロゲンが5倍になる」と話す。閉経後は体脂肪のコントロールをすることが、乳がん予防の鍵になりそうだ。